紅葉を見に、京都へ行こう! 京都在住の写真家・小林禎弘さんが、長年の撮影の経験を踏まえて紅葉の名所を紹介します。京都の人ならではの行き届いた観光案内、撮影指南としてもお楽しみいただけます。

【第3位】円山公園

小川治兵衛により作られた池泉回遊式の庭園は、見る角度によって次々に表情を変え、見飽きることがありません

 祇園枝垂桜で有名な円山公園は、京都市で初めての公園で明治19年に作られました。北は知恩院、南は高台寺、西は八坂神社、東は東山に接していて、どこへ行くにも便利です。

 しかし、現在の姿は当時のものではありません。火災で焼失したあと1912年(大正元年)に小川治兵衛により池泉回遊式の日本庭園が作庭され現在の形となりました。園内中央に位置する「ひょうたん池」を囲むように艶やかに楓が紅葉します。池に流れ込む小川のほとりにも、計算された配置に桜や楓が紅葉します。

 秋も深くなると、三脚を構えた写真愛好家の方もたくさん見かけます。撮影のポイントとしては、池を渡る石橋をうまく撮りこむことです。池にかぶさる紅葉の下に石橋とさらにその下の池の水面、または少し引いてこの写真のように東山まで入れると絵になります。池の岩にしばしば大きなアオサギがとまっていることがあるので、アップにしてその後ろにぼかした紅葉がくるようにするなどでしょうか。

 さらにお勧めは、東山に向かって緩やかな丘陵に茶店や料亭が点在していますので、そこへ通じる石段の小道と竹垣、その上にかぶさるような紅葉、そこをうまく切り取ると、とても京都らしい絵が撮影できます。さら奥には小さな滝があったり、様々な紅葉を楽しめて見飽きることがありません。

 最も紅葉が密集しているのが、南東の長楽寺一帯です。もともと温泉や歓楽街があったそうですが、今では跡形もありません。丘の上のベンチに座ると目の前いっぱいに紅葉が広がります。もったいないことに、ここまで来る人は少なく穴場です。

 さらに細かな情報ですが、最奥から山道で、東山の将軍塚に登ることができます。車で行ける夜景スポットとして知られていますが、昼間の眺めもいいですよ。時間にして約15分、市営展望台から京都市街を眼下に眺められます。こんな繁華街なのにハイキングが即味わえます。

 帰りには、長楽館のロココ調のホールでお茶をするのがお勧めです。明治の“煙草王”といわれた村井吉兵衛の迎賓館だった建物で、外観はルネッサンス風、中に入るとロココ調、ネオ・クラシック、アールヌーボー、和風の部屋があり、優雅な気分に浸ることができます。

円山公園の紅葉スポット
交通手段 市バス「祇園」下車。京阪電鉄「祇園四条」駅下車。阪急電鉄「河原町」駅下車。

小林禎弘
フォトグラファー。京都市生まれの京都市育ち。同志社大学を卒業後3年間の公務員を経て撮影の世界へ。雑誌、書籍、広告を舞台として、京都を中心に西日本を幅広くカバー。「撮影歴30年ですが、それくらいでは京都の事はまだまだわかりまへん」。

2013.09.28(土)