東と西の文明が融合し、独特の文化を生み出したシチリア最大の都市、パレルモ。

 複雑な歴史と異文化が混ざり合うカオスが、好奇心を掻き立てる。エキゾティックに薫る、エキセントリックな地中海の十字路へ。

 5回に渡り、パレルモの魅力を紹介。今回は「パレルモ貴族のライフスタイル博物館」。

» 第2回 イタリア最大級の巨大市場は、もはや観光スポット!
» 第3回 今のパレルモを味わうグルメ最旬アドレス
» 第4回 パレルモのラウンジ・バールでライトディナーを
» 第5回 パレルモのベル・エポックを象徴する典雅なホテル

ゲーテが降り立ったパレルモ旧港は、美しいヨット・ハーバーに変貌を遂げた

 シチリア西岸のゲートウェイ・シティ、パレルモ。地中海の中心に位置するこの街には、古代カルタゴを建設したフェニキア人が上陸した紀元前9世紀から、古代ギリシア、古代ローマ、ビザンチン、イスラーム、中世ヨーロッパ最大の繁栄を築いたノルマン王朝時代を経て、フランス、スペイン……。無数の民族が通り過ぎ、幾多の栄光の記憶を刻みつけていった。ビザンチンの黄金のモザイク、アラブ風のクーポラ、バロック、リバティ。時代と文化を異にする建造物が、混然と立ち並ぶ街は、カオスそのものだが、地中海の歴史を目の当たりにするような、その景観に、訪れる者は誰しも心奪われる。

王宮脇に立つヌォーヴォ門。街に点在する旧跡はライトアップされ、夜を華やかに彩る

 食文化もしかり。多様な文化の歴史的洗礼を受けた、この街の味覚は、創意工夫を凝らした美麗な逸品から、イタリア随一のバリエーションを誇るストリートフードまで、飽きさせることがない。

 ところで、気になるマフィアだが、抗争時代は、90年代で終わりを告げた。今、観光客が目にするのは、「みかじめ料反対」のステッカーぐらいだろうか。新しい店が続々誕生し、修復や整備が進みつつあるパレルモは、ゲーテが「世界で最も美しいイスラームの都市」と称えた輝きを、再び取り戻し始めている。

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photographs:Atsushi Hashimoto
text:Sawako De Nola Iwata