●身体作りと精神的にも追い込んだ壮絶な役作り

――その後、中国人役も演じられる俳優として活躍されます。そして、21年に放送されたドラマ「アバランチ」では秘密組織の工作員役に出演。綾野 剛さんとのアクションシーンも大きな話題を呼びました。

 19年に綾野さんが『破陣子』(日本未公開)という中国映画に出演されたんですが、僕もその作品に出演していたんです。それがきっかけで綾野さんや綾野さんの事務所の方と仲良くさせていただいた縁もあり、「アバランチ」にお声がけしていただきました。

 何を考えているか分からない、感情を表に出さない不気味な役でしたが、TVドラマだったこともあり、とても反響が大きかったですね。

――最新主演映画『生きててよかった』では、プロボクサーを引退した創太役を演じられています。作品を観ると、鈴木太一監督やアクション監督である園村健介さんとの絶対的な信頼関係が見えてきます。

 この映画は企画を立ち上げてから、5~6年かかった作品なので、鈴木監督やプロデューサーとはいろいろ話し合っています。脚本もかなり変わっていって、人間ドラマやエンタメ要素を増やしていきました。

 また、アクションシーンに関しては、中国映画流というか、アクション監督に絶対的な権限を持ってもらうようお願いし、園村健介さんを紹介してもらいました。彼がアクションを担当した『ディストラクション・ベイビーズ』での生っぽさを出したかったんです。

――約2ヶ月で10キログラムを減量し、体脂肪率3%まで仕上げた身体作りなど、苦労されたことは?

 悶々としている創太という人間を演じるにあたり、撮影前から2ヶ月ほど、僕自身も悶々としながら、ウィークリーマンションにひきこもって生活していました。あえて、自分からそういう状況に追い込んだのですが、身体作りや減量といったことよりも、それが精神的にいちばん辛かったです。

●今後も日中分け隔てなく、活動していきたい

――本作では、どんな新しい木幡さんが見られると思いますか?

 個性的なキャラクターによる物語が展開していくなか、アクションに関しては、これまでの日本のアクション映画とは違うものになっていると思います。また、創太の奥さんとのラブシーンに関しても、鎌滝恵利さんと本気と本気のぶつかり合いをしているんです。そこも是非、注目してもらいたいです。

――今後の目標や展望について教えてください。

 日中分け隔てなく、日本でも仕事をしつつ、これまで通り中国でも活動していけたらと思っています。実際、コロナ禍で1年半近く中国には行けていないですが、どんどんいい作品を残していけたらと思います。

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木幡 竜(こはた りゅう)

1976年9月12日生まれ。神奈川県出身。プロボクサーとして活躍後、2004年に俳優デビュー。09年の中国映画『南京!南京!』で才能を見出され、単身中国への活動に拠点を移す。その後、数々の作品に出演するなか、21年にはドラマ「アバランチ」にも出演。キレのいいアクションと独特の存在感で注目を集めた。

『生きててよかった』

ドクターストップで強制的に引退を迫られたボクサーの楠木創太(木幡)。未練と執着を捨てきれぬ中、楠木は幼馴染の幸子(鎌滝恵利)との結婚を機に新しい生活を始めるも、何をやってもうまくいかない日々。そんななか、創太は謎の男から大金を賭けた地下格闘技へのオファーを受けることに。

https://happinet-phantom.com/ikiteteyokatta/
2022年5月13日(金)より公開
(C)2022ハピネットファントム・スタジオ

Column

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文=くれい響
写真=佐藤亘