広瀬姉妹の活躍は止まらず、ニホンモニターの「2021年タレントCM起用社数ランキング」では広瀬アリスと広瀬すずがCM契約社数で同数3位に並ぶという驚きの状態だ。姉妹芸能人は過去多くいたが、これほど同時期に互いに遜色なく活躍し、しかもそのキャラクターが競合せず、正反対の方向で評価されるという理想的な関係に至った例は記憶にない。

 メディアやネットは、二人の仕事の勢いがわずかにでもどちらかに傾けばまた比較して双方をあれこれと煽るのかもしれない。だが、もうそれに動揺しないほど、俳優としての広瀬アリスは足場を固め、周囲には俳優としての信頼関係が広がる。

『ラジエーションハウス』の撮影オフショットでは、年上の本田翼が広瀬アリスに猫のように自由にじゃれつく姿がファンの心を和ませている。かつて舞台で共演した佐藤二朗が、演劇論をぶつけて泣かせてしまった過去をラジオで謝ると、ゲストの広瀬アリスは「吹っ切れた」「あの一件があって私は良かったなと思っている」とそれに応える。

 そうした役者仲間たちと幸福な俳優人生を送りながら、彼女はかつて事務所に与えられたアリスという名前をルイス・キャロルのおとぎ話から少しずつ取り戻し、自分の名前にしていくのではないかと思う。『ラジエーションハウス』の広瀬裕乃という役に、演じるうちに血と心を通わせ、自分のものにしていったように。

 きっと何年か未来の日本では、アリスという名前は単にガラスのような美少女の代名詞としてだけでなく、迷い悩みながら生きるリアルな女性の名前として、多くの人々に記憶されていることだろう。

2022.03.18(金)
文=CDB