ランキングはずっと1位。だけど怖くて不安だった

――「私が女優になる日_」は全員演技未経験でスタートした出演者が、回を重ねるごとに成長するのを見られるのが楽しみのひとつでしたが、飯沼さんに関しては初回からうまいなと思わせるものがありました。あの安定した演技力はどこに秘訣があったんでしょうか。

 自分ではまったくわからないですけど、もしそんなふうに思っていただけたのだとしたら、昔からドラマを観るときもよく役者さんの演技に注目して見ていたところが大きかったのかもしれません。

 もともとドラマを観るのが大好きで。役者さんの演技を見ながら、私だったらこんなふうに演じてみたいなと考えるのが好きだったんですね。そうやってあれこれ想像を膨らませていた経験が役に立ったところはあるかもしれないです。

――3人の審査員の投票によって勝敗が決まるという形式でしたが、飯沼さんは序盤から常にトップをキープしていました。早いうちから「本命候補」と目されることに対してはどんな気持ちだったのでしょうか。

 怖かったです。ちょっとうまくいきすぎているというか、自分の中では圧倒的に相手の方が良かったと思っていたから、ポイントをもらっても不安なんです。

 それに、自分がポイントをもらうということは、その分、相手からポイントを奪っていることにもなる。もちろん演技バトルだし、そういう勝負だというのはわかっているんですけど、そこに対する苦しい気持ちもあって……。

 周りのみんなは「次もいけるよ!」と応援してくれるんですけど、どこか私の中ではその声援に応えきれないというか。このまま進んでいっていいんだろうかという複雑な想いでした。

――それが第5回の演技バトル(脚本担当は、劇作家の根本宗子)で初めて敗北となりました。

 もともと自分に票が入っているのがおかしいと思っていたぐらいなので、絶対負ける日が来ることは想像していました。だから、あんまり悔しいという気持ちはなくて。それよりも対戦相手だった赤穂(華)ちゃんの演技がすごく良かったから。

――あの回は、女優志望の女の子が、オーディションの前夜、初めてステージママである母親に反論するという内容でしたね。

 お母さんに自分の気持ちを伝える演技で、赤穂ちゃんがちょっと笑うお芝居をしてたんですね。その発想が私にはまったくなくて。純粋にすごいなと思ったし、私ももっと頑張らなくちゃという気持ちになった。

 負けたことよりも、お芝居って正解がないんだと思えたという意味で、私にとってはすごく大きな回でした。

2021.10.11(月)
文=横川良明
撮影=松本輝一
スタイリスト=木下彩
ヘアメイク=Otama