2018年、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストへ出場し、“かわいすぎる男子高校生”として注目を集めた井手上漠さん。この春、自らの生い立ちや性別について綴ったエッセイが反響を呼んでいる。性別とは。普通とは。漠さんの考えをお聞きしました。

井手上漠さん
井手上漠さん

「性別はないです」

 島根県・隠岐諸島にある美しく小さな島、海士町。そこで私は男性の身体で生まれました。今年の3月に高校を卒業したばかりの18歳です。

〈いでがみばくです、性別ないです〉

 これは、私のTwitter上での自己紹介の一文。身体も戸籍も、性別は男性なのですが、「あなたは男性ですか?」と聞かれると、「心は男性でもあり、女性でもある。どちらでもあるし、どちらでもない」と答えます。そう聞いて、混乱する方もいるかもしれません。

 もっと正確に言うと、「男性」か「女性」かという2択、「どちらでもある」のか「どちらでもない」のかという2択では、どちらとも答えられないのです。なぜなら、これらの質問は、性別というものが、男性と女性、このいずれか2つしかないという前提に基づいているからです。

 私の場合は、どちらか一方になりたいわけではないし、心に“境目”があるわけでもありません。だから、自ら説明するときには、「性別はないです」というのが、今、一番しっくりくる伝え方なのです。

週刊文春WOMAN vol.10(2021年 夏号)
週刊文春WOMAN vol.10(2021年 夏号)

「性別」を意識せざるを得なくなった小学校高学年

 幼い頃から“強い”ものや“かっこいい”ものよりも、“可愛い”ものや“美しい”ものに惹かれていました。憧れのキャラクターは戦隊ヒーローではなくプリキュアやリカちゃん。自分が着る洋服もふわふわした可愛いものが好みで、小学校に入学した時には髪の毛も肩くらいまで伸ばしていました。

 ただ単純に好きなものを着て、好きな髪型をして、好きなもので遊ぶ――。私自身は何の違和感もなく、他の子どもたちと同じように、自分の好きなものを選んでいただけです。「性別」というものを意識することなんてありませんでしたし、友だちに何か言われることもなかった。

2021.07.05(月)
文=「週刊文春WOMAN」編集部