「アンティークショップ、っていうのはお金の匂いがするから好きじゃないんだ」という店主が自分の好きなものだけを置いているという“古道具屋さん”

 クズグンジュックらしさが出ているのは、こうした国同士の文化の融合だけではない。ここでは世代同士の融合もある。定年退職したであろう世代のおじさんたちが、道沿いに置かれたイスでトルココーヒーを飲みながらゆったり時間を過ごしているかと思えば、若い世代、とりわけメディアやデザイン系の職に就く人々が自らを表現する場としてクズグンジュックを選んだりもしている。彼らはアートギャラリー、アロマテラピーショップ、トルコ料理ワークショップなど、おのおのが“好きでやっていること”のスペースを開放している。両者に共通しているのは、クズグンジュックらしさを守りながら心地よく暮らして行きたい、という気持ちだろう。観光地としてはまだまだ有名でないが、その町の小ささがなんとも心地よく、それだけに新旧一体となった古き良きクズグンジュックがうまい具合に守られてきたのだろう。

リノベーション中の石造り建築

 アルメニア人建築や古いトルコ式家屋が残るクズグンジュックでは、近年古い建物の修復作業も進んでいる。この地区のメインストリートであるイジャディエ通りは木々が立ち並ぶ広い並木道で、この両側には新たにリノベーションが行われたであろう、カラフルなトルコ式家屋が並んでいる。この通りをベースに一周してもせいぜい20分ほどの小さなクズグンジュックは散歩するにも気持ちのいいエリア。見知らぬおじさんが「メルハバ(こんにちは)」と声をかけてくれたりするのも、土産物屋さんの客引きではなくトルコ人のホスピタリティから来ているのかと思うと、気持ちよく「メルハバ」と返せるものだ。

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text&photographs:Aki Yasuo