もともとトルコ人は「くつろぐ」のが大好きな民族。晴れた日や週末に、道に出されたイスに座ってチャイを飲みながら、ゆっくり自分の時間を楽しむトルコ人を見たことがある人は多いだろう。

 そんななか、自称カフェ・フェチの私が、今のところイスタンブールで最もくつろげるカフェとしてお気に入りなのが、ここ「カラバタック・カラキョイ」だ。

皆、おのおのくつろいでいるカフェの店先。夏は特に気持ちのいい空間が広がる

 もともとここはオーストリア・ウィーンのユリウス・マインル社のコーヒーを2007年からトルコに輸入している会社のオフィスで、2011年9月にカフェ部門をオープンしたばかり。とはいえ、100年以上昔から残る古い建物を修復して造られたカフェの内装は、その人気を支える重要ファクターのひとつにもなっているほどマニア好み。旋盤士の仕事場だったという時代からそのまま残るコンクリートの壁、40年もののウッディなテーブルや、バーカウンターに置かれたトラクターといったアンティーク家具の数々、そして店内あちこちに掲げられているユリウス・マインル社の古いポスターなど、“古いモノ好き“にはたまらない空間となっている。

 また、店内に流れる音楽もスムージージャズを中心とした癒やし系で、微妙に調整された音量が耳に心地よい。トルコポップなどを大音量で流すカフェが多いイスタンブールで、これはとても貴重な存在。一瞬自宅でくつろいでいるかのような感覚に陥るほどだ。お店の前に広がるぶどうの木陰で飲むコーヒーもまた格別。

古いトラクターが目印の店内。これに加えて壁の古さやマインル社の古いポスターなど、アンティーク好きにはたまらないグッズの数々

 ちなみにお店の2階にはオフィスとカフェが同居しており、カフェ部分は一般家庭のダイニングルームのような雰囲気だ。やはりここにもしっとり落ち着きのあるアンティーク家具が並んでいるが、この階の特徴は「おひとり様、または読書専用空間」と定められているところ。そう、ここは静かに過ごしたい人だけが入れるエリアになっていて、基本的には携帯電話などは禁止なのだ。ここのソファに座って外の景色を眺めながら静かにコーヒーを飲むと、この上なく贅沢な気持ちになってくること間違いなし!

壁は旋盤アトリエ時代からそのままだというが、その微妙な汚れ具合がまたよし。この壁に、マインル社のトレードマークが案外しっくりきている

<次のページ> 上質なコーヒーのおいしさもイスタンブール屈指!

text&photographs:Aki Yasuo