兵庫県姫路市のシンボルといえば、姫路城。築城以来400年余り、一度も戦災にあうことなく当時の様子を伝えている全国的にも貴重なお城です。ユネスコの世界文化遺産に日本で初めて登録されたことからも、その素晴らしさは納得できます。現在、平成26年度まで姫路城大天守保存修理事業が行なわれており、修理見学施設「天空の白鷺」から、その様子が眺められます。

 JRや山陽電車の姫路駅から街を歩くと、和菓子屋さんが目につきます。姫路では、江戸時代の後期、藩主酒井家の歴代当主が茶の湯を好み、産業振興のために家老であった河合寸翁によって城下に和菓子づくりが広まったのだそうです。そんな歴史ある姫路の和菓子の世界で、新進のお店が2009年3月にオープンした「甘音屋」です。

 お店がある蒲田は、姫路市の南西部。お店の少し西側には夢前川がゆったりと流れています。白壁に暖簾が揺れる一軒家で、店内も落ち着いた雰囲気。

 ご主人・森雅史さんは百貨店に勤めていて、「飲食店事業部」に。そこから退社して和菓子の修業を34歳で始めました。期間を2年半と決めて、修業に入ったその日から餡を炊き、餡を包む技術も学んだといいます。早朝から深夜まで、休む間も惜しんで技術を身につけたそう。

「姫路には和菓子屋がたくさんある。歴史もある。だからこそ、姫路の街の人々が食べたことのないお菓子を披露したい、それを評価してもらいたいと思いました」と、森さんはにっこり。自分自身がつくって、他の店に負けないと思う和菓子だけを出そうと考えたのだそうです。

 それにしても、中心街ではない足回りの不便なお店に来てもらうにはどうしたらいいかが大きな問題でした。そこで、百貨店に勤めていた森さんらしい注目ポイントが「おつかいもの」。「スモールギフト。日本には、行事はもちろん日常的に進物の習慣があります。手土産やおもたせにふさわしいお菓子という切り口は、姫路ではどこもやっていなかった」。他にない味わいの、もらってうれしいおつかい菓子は話題になり、今では、大丸神戸店地下1階にも店舗ができています。

<次のページ> 餡が焦げそうになる音を聞き取り、できる限り強火で炊き上げる

2013.04.14(日)

SHARE

この記事が気に入ったら「いいね」をしよう!