舞台で、名優・市村正親と共演

――さらに今年から、市村正親主演の現代劇「エンロン」などで、大劇場の舞台を踏まれるようになりましたが、心境みたいなものは変わりましたか?

 舞台のお仕事はやっていましたが、映像のお仕事の方が多かったこともあって、正直、「エンロン」の稽古が始まった当初は舞台での立ち方もよく分からなかったんです。それに、長ゼリフをいただいても、どうやって演じたらいいのか分からず、いろいろ悩んでいました。そんな状況を乗り越えることができたのは、共演の市村正親さんのアドバイスがあったから。存在感がある方で、いつもオーラを感じるんですが、舞台が始まってからも、本番中に僕のセリフを聞いてくれて、毎日のようにアドバイスしてくださったんです。演技者としてはもちろん、そんなお人柄も含めて尊敬する大先輩です。今回の「家康と按針」でも共演できて光栄です。

――ちなみに、「ANJIN イングリッシュサムライ」として上演された初演版では今回、古川さんが演じられる宣教師・ドメニコ役を藤原竜也さんが演じられましたが、意識はしますか?

 どうしても比べられてしまうと思うので、そういった意味でのプレッシャーはあります。でも、僕は竜也さんではないので、以前の公演のビデオを何度も見て、マネしようとしても、絶対に同じようには演じられない。だから開き直って、自分なりのカラーを出したドメニコを演じたいと思っています。今回はタイトルも変わったことですし、新しい気持ちでできたらと。

――来年には、ロンドン公演も控えていますが、意気込みを聞かせてください。

 英語が得意なこともあって、前から海外の作品に携わりたいと思っていたんですが、「家康と按針」は、僕にとって初めて英語で演技をする作品なんです。自分のなかではこれを機にもっと海外に出ていけるようになりたいと思っています。なので、この作品に出演させて頂けることが本当に嬉しいと同時に、この大役をしっかり演じ切らなくては、という強い想いがあります。僕はアメリカとカナダで育ったので、イギリスのイントネーションだったり、細かいニュアンスに関しては苦労も絶えませんが、イギリス人の演出家やキャストに助けてもらいながら頑張っています。

2012.12.07(金)
text:Hibiki Kurei
photographs:Miki Fukano