赤道を越えた南太平洋に、“楽園”という響きが世界でいちばん似合う島々がある。

 19世紀後半から20世紀にかけて、欧州の画家やシンガーなどアートに心捧げた人々は、文明によって失われた楽園を求め、タヒチを目指した。

 彼らを惹きつけてやまなかった何かを探しに、タヒチの島々――ボラボラ島、ファカラバ島、マルケサス諸島のヒバオア島、タヒチ島へ渡った。


ポリネシアの最高神が創造した
美しきボラボラ島

 日本から南東へ約9,500キロ、南太平洋に浮かぶフレンチポリネシア、タヒチ。

 ソシエテ諸島、ツアモツ諸島、マルケサス諸島、オーストラル諸島、ガンビエ諸島の5つの諸島からなる118の島々が、ヨーロッパ全土とほぼ同等の広大な海域に点在している。

 5つの諸島のうち、最もポピュラーなのがソシエテ諸島。国際空港のあるタヒチ島や、ハネムーナーの憧れを集めるボラボラ島が属する、タヒチの代名詞的エリアだ。

 ソシエテ諸島には、ヤシ林の向こうに緑豊かな高峰がそびえ、青の濃淡の移ろいが美しいラグーンが広がる、楽園タヒチのイメージどおりの島々が多い。

 なかでもボラボラ島は、ポリネシアの最高神タアロアが「海と陸が完璧なハーモニーを奏でるパラダイス」を目指し、創造したとされる。

 美と好天の神タネと海の王ティノルアが土台である島を創り、海溝の神トフが絵具を使って色鮮やかなサンゴや魚たちを描いた。

 いわばボラボラ島は、神々が総力をあげて取り組んだ傑作アートなのだ。

 タヒチ島の北西約260キロに浮かぶボラボラ島は、この島の象徴であるオテマヌ山とパヒア山、2つの高峰がそびえる一周約32キロの本島と、それを取り囲むラグーン、そしてラグーンのエッジにモツ(タヒチ語で“小島”の意味)が点在する地形。

 本島にもリゾートはあるけれど、スーパーラグジュアリーなリゾートは沖のモツを選ぶ傾向がある。

 注目したいリゾートは、ボラボラ島に久しぶりにビッグニュースを振りまいた、こちらの2軒。どちらも神々が手掛けた美しきボラボラ島を彩る、名作リゾートだ。

2019.08.31(土)
文・撮影=古関千恵子