「毎度!」「おいど!」の
コール&レスポンス

 沢田研二。あと100年いける!

 ライブは和やかに進んでいく。そしてジュリーが「毎度!」と叫び、会場が「まいど!」と返すコール&レスポンス……と思い込み、私もハイテンションで「まいどーっ!」と返していた。

 なーんか周りと響きが合わない気がするが、まあ私の声が甲高いせいじゃろうて、と勝手に自己完結し、最後まで「まいどーっ!」で貫いた。

 ところが、後から知ったのだが「おいど」と返すのが大阪流だったそうなのである。

 ひーっ、あの違和感は「ま」と「お」の違いだったか―ッ! OHミステイクッ。

 ありがとう、サンキュー、ありがとうねえ。ジュリーは歌うごとにそう言って手を振る。

 かかカワイイ。ジュリーがかわいい! 

 「ジュリーちょっと怖い人かも」という先入観は、スカッとファラウェイ。

 両手を振って「ジュリー!」と叫ぶ人の手と声が波のようだ。きれい!

 それを見ているうちに、噂その③の「ジュリーは昔のヒット曲をあまり歌わないらしい」に関しては、検証をやめた。

 少なくとも、私が口ずさめる曲は5曲あったが、ファンの方々にとって、どこまでが“昔のヒット曲”なんだろう? とわからなくなってきてしまったからである。

 舞台狭しと走り回る70代のパワーボイスは、マジ卍。明かりがついても現実に戻れない。

 私は今ジュリーの魔法にかかったシンデレラよ。あえてジュリーをお前呼ばわりする失礼をお許しいただきたい。ああもう「お前が魔法使い」だってば!

 沢田研二大好きなマダムは照れくさそうにこう話していた。

「ジュリーのライブの前には、ヘアカットに行って髪を整えるの。ふふ、もうね、片思いよね。でもいいの。生きる支えなのよね。これからもずっと、ずっとファン!」

 以前沢田研二の記事を書いた時も、ファンの方から、

「ジュリーがずっと大好き。いつか彼のライブを見に行きたいから頑張っています」

 というメッセージをいただいたことがあった。

 わかる気がした。私も、ライブから2カ月経ったが、あの深い声が腕とか腹とかにまだ響いて忘れられないもの。 

 沢田研二ツアー「SHOUT!」は2019年11月28日(木)まで。彼のSHOUTに魂ぶち抜かれに行く人がたくさんいる。彼の歌声が支えという人も、何人もいるのだろう。

 70を過ぎたジュリーの魔力、いまだ進化中である。

 そして、今もだれかを若返らせている。

田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)など。
●オフィステイクオー http://www.take-o.net/

Column

田中稲の勝手に再ブーム

80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。

2019.07.07(日)
文・撮影=田中 稲
画像=文藝春秋