井筒監督特有のナマモノの演出を体感

――劇中では壮絶なケンカシーンもありましたが、立ち回りなどでは溝端さんも苦労されたのではないでしょうか?

 相手役が格闘家の方だったんですが、寸止めでも痛さを感じるんですよ。それに、ほかのエキストラさんも、大阪のオーディションで見つけてきた生粋で怖い方なんですよ(笑)。その上、井筒監督は殺陣師をなるべくつけず、泥臭く生臭いケンカシーンを撮る方なので、本当のケンカをしているみたいなんです。軽いケガもちょいちょいしたし、確かに大変でしたけど、なかなかできる経験じゃないので楽しかったですね。

――そんなさまざまな体験をされた今回の現場で、溝端さんがいちばん学んだことはなんでしょうか?

 僕は演じるときに気合いが入って、どうしても力んでしまうんですが、それを見た井筒監督が「お前の気持ちで、そういう風にやってくれているのであれば、それでええねん。こっちはそれを勝手に撮るから」と言ってくださったんです。感情のままにやって、それを良しとしていただけたこと、それが自分のなかで意外でもありました。セリフを噛んでもいいし、相手のセリフとカブってもいい。そういう“空気”を大切にしたナマモノの演出を体感できたことは大きかったです。感銘を受けました。

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2012.11.02(金)
text:Hibiki Kurei
photographs:Nanae Suzuki
styling:Norihito Katsumi(Koa Hole inc.)