クールに見えて温かい
島の再生を目指すイン

●Fogo Island Inn
(フォーゴ・アイランド・イン)

凹凸のある海岸線で建物の水平を保つのに、フォーゴ島では「stilts(竹馬)」と呼ばれる工法が広まった。フォーゴ・アイランド・インも、建物から足が生えたように見える“竹馬工法”を採用。
「Fogo」とはポルトガル語で炎の意。16世紀にはポルトガル人もこの島付近で漁を行っていた。良質な塩をイギリスに渡し、船をフランスから守ってもらっていたという記録が残る。

 北米大陸の東端、地図にすると右の隅に位置するニューファンドランド島、そこに隣接する人口約2,500人の小島がフォーゴ島だ。

 18世紀にタラを追いかけてアイルランドとイギリスから来た漁師が住み着き、地理的要因もあって現代まで独自のコミュニティを保っている。

 電気が通ったのが1960年代、電話は'80 年代で、島の人は「だから18世紀も20世紀もほぼ一緒」と笑う。

ガラス張りのダイニングルーム。北大西洋に夕日が沈む。
光の加減で多彩な表情を見せるよう、外壁は灰色がかった白。

 地の果てとも孤島とも形容したくなるフォーゴ島の荒涼とした海岸線に、近代的なインが生まれたのは2013年。

 この島の出身で、カナダ本土のハイテク企業で大成功を収めた女性実業家ジータ・コブ氏が創業者だ。ただしコブ氏は利益のためにホテルを開業したわけではない。

 タラ漁が不調になってから衰退する一方の島を再生するために、コブ氏は2人の兄弟とともに財団を立ち上げ、その活動の一環としてホテルを運営しているのだ。

 ホテルや、ホテルの調度品を作るショップがあげる利益のすべてが財団に寄付される。

アーティストの展覧会が開かれるギャラリー。
左:ダイニングルームに隣接するバーとラウンジ。
右:ロビーからも海を一望。

 コブ氏は世界各地からアーティストを招き、アーティストは島の各所に建てられたスタジオで創作活動を行う。経済の活性化とともに、文化も発信しようとしているのだ。

左:建物に木を使用することもコンセプトのひとつ。
右:壁材はスプルースという木材。
左:最上階の4階にはサウナとホットタブが。
右:ラブラドール・ルームは1泊1,875カナダドル。

 お隣、ニューファンドランド島出身の建築家トッド・サンダース氏が手がけた建物は“地元×グローバル”“伝統×モダン”など、対極のものがクロスするというコンセプトでデザインされた。

 外観はクールに見えるけれど、一歩足を踏み入れると、島の伝統を反映した人間味ある家具やラグ、人懐っこいスタッフのおかげで、どこにいても居心地がいい。

食事は宿泊料金に含まれる。この日のメインは写真のラムのほか、牛、タラ、ロブスターから選ぶ。
前菜の海藻、ファイヤーウィード。
デザートのヤギ乳のババロア。

 荒々しい自然と、心が和む温かいもてなし。ここでも対極のものがクロスしている。

カナダの東端、ということは最もヨーロッパに近いカナダということ。黄昏時、数百年前に水平線の向こうからこの地に来た船を想う。

Fogo Island Inn
(フォーゴ・アイランド・イン)

所在地 210 Main Road, Joe Batt's Arm, Newfoundland
電話番号 709-658-3444
客室数 29室
料金 1,875カナダドル~
https://www.fogoislandinn.ca/

Text=Mamiko Kume
Photo=Takashi Shimizu
Coordination=Yasuyo Hibino(fish*co.)
Cooperation=Destination Canada

この記事の掲載号

幸せのカナダ

CREA Traveller 2018年秋号


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