#157 Portofino
ポルトフィーノ(イタリア)
“リヴィエラの真珠”と称される、リグーリア州の小さな港町、ポルトフィーノ。
マスタードイエロー、くすんだピンク色、レンガ色など、カラフルな家並みが港に面して続き、背後には糸杉がぴょんぴょんと突き出た丘が迫る愛らしい村は、州立公園であり、国定史跡にも指定されています。
もともと漁業を生業としていた村で、漁師たちは深夜に漁へと出港。仕事を終えて戻るのは、夜も明けきらぬ頃。薄暗がりの中では入り組んだ海岸線のどこに自分たちの帰るべき港か、よくわからない。
そこで、沖からでもひと目で見分けがつくよう、港に面した家並みをカラフルにペイントしたのが、このパレットのように色鮮やかな村の始まりなのだそうです。
夏のシーズンともなると、世界中からセレブたちがこの小さな村に押し寄せます。
港にはスーパーカーのような流線形のメガヨットがずらり。船上で制服姿の数人の船員がてきぱきと作業を行う中、デッキでは白シャツに白パンツ、そして裸足のシニアが赤いビーチドレスの女性とくつろいでいます。
絵に描いたようなお金持ちを、はじめて“生”で見ました。従業員の数を指折り数えて、年間維持費を計算してしまう私は、やはり根っからの庶民です。
ポルトフィーノにセレブが集まる理由は、美しい自然とインスタ映えの家並みだけではありません。
実は、この村には“駅”がないのです。ミラノやジェノヴァから鉄道で結ばれたお隣の町サンタ・マルゲリータ・リグーレから、船またはバスを乗り継がなくてはなりません。簡単にはアプローチできないことから、観光客の数も限られるのです。
その点、セレブは自家用ヨットでダイレクトに乗り付けられます。
2018.09.08(土)
文・撮影=古関千恵子