500年の時を超越する
奇跡の金属工芸
●金細工またよし
首里の住宅地に佇む小さな工房に金槌の音がリズミカルに響く。琉球王朝の貴族たちに愛され、かつて首里王城の周辺で栄えた“金細工”は、まさに奇跡の伝統工芸。その歴史は16世紀初頭にまでさかのぼり、一時は廃絶寸前だった職人技をたったひとり継承するのが又吉健次郎さんだ。
「500年の大きな時間の流れを止めたくない。そして、昔に返せるものを作り続けたいのです」
父から受け継いだ道具を用いて、銀の板棒を丹念に打ち、時代を超越した逸品へと仕上げていく。房指輪は、婚礼指輪として花嫁を祝福した縁起物。7つのチャームそれぞれに幸せを願う思いが込められている。ジーファーは、琉球伝統のかんざし。貴婦人の後ろ姿のような曲線が美しく、結び指輪は二人の絆を象徴する意匠が優美な詩情を醸す。
「昔の話、工房の話、いろんな話をしながら、実際に金細工を手にしてもらえたら嬉しいですね」
金細工またよし
7代目の又吉健次郎さんが、500年の伝統技を受け継ぐ小さな工房。制作の様子を見学できるほか、作品の購入ももちろん可能。
所在地 沖縄県那覇市首里崎山町1-51
電話番号 098-884-7301
営業時間 9:00~18:00
定休日 日曜
※できれば訪問前に電話を。カフェ&ギャラリー「うみと」(糸満市 ※土・日・祝のみ営業)でも購入可能。お問い合わせ 080-6480-1310
文=矢野詔次郎
撮影=長谷川 潤