国宝
黄色地鳳凰蝙蝠宝尽くし青海立波模様衣裳
18-19世紀
那覇市歴史博物館蔵 (展示終了)

 夏の着物のおしゃれの白眉、蜻蛉の羽のように薄く、張りのある芭蕉布をはじめ、沖縄では数多くの魅力的な染織品が作られてきた。

 中でも鮮やかな色とユニークな柄とに彩られた「紅型」は、尚王家の保護を受け、王族や貴族、士族を中心に着用された、まさに琉球王国を代表する衣裳。

黄色地牡丹雲に菊尾長鳥模様衣裳
19世紀
東京国立博物館蔵

 琉球王国末期、美貌の女性であることを隠したヒロイン真鶴が、当初は男性・孫寧温として王国の官僚に登用され活躍、後に女性として後宮入りし、運命に翻弄されながらも懸命に生きる姿を描いたNHKのドラマ「テンペスト」(原作:池上永一『テンペスト』上・下、角川書店刊)で目にされた方も少なくないだろう。仲間由紀恵さん演じる主人公が、凛々しい男姿から鮮やかな黄色を主にした紅型衣裳をまとうや雰囲気が一変、熱帯の花のような艶やかさが匂い立つさまに、目が釘付けになった。

 物語の中に登場する尚王家の堂々たる衣裳も、今展に出品されている。肩から裾にかけて鳳凰、瑞雲、蝙蝠、宝尽くし、青海波、立浪と、中国の吉祥文様を中心にさまざまなモチーフが左右対称に配された、大胆な柄だ。

 このように複数の型紙を使って上から下へ、一幅の絵のように配置する「鎖大模様型」、繊細な小紋を重層的に表現する「朧型」など、紅型の意匠は多彩な表現が工夫されてきた。

 いわば「ナショナル・コスチューム」なのだから、当然琉球オリジナルの素材とデザインなのかと思いきや、15世紀以降、海上交通の要衝として各国と交流を重ねて栄えた土地柄らしく、というべきか、実は外国からもたらされたデザインや素材、技術などを積極的に取り入れたものが非常に多い。

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2012.07.07(土)