何と日本への出店も計画中!

オリジナルカクテルを楽しめるBARカウンターはシックでどこかノスタルジックな雰囲気。

 さてさて、流行に敏感なミラネーゼからもすでに支持を受けている理由は、おしゃれな店内もさることながら、やはりそのおいしさにあります。ここで取り扱われている商品はすべて、トスカーナ地方に数多くある生産者の製品のなかから選りすぐった逸品ばかり。おいしさ抜群のセレクションです。

 それもそのはず、このお店のオーナーは、そのおいしさで世界中から依頼を受ける人気のケータリング会社をフィレンツェで営んでおり、おいしい食材に精通したプロフェッショナルなのです。

オーナーのシモーネ・アルネトーリさん。

 フィレンツェのケータリング会社から一転、ミラノでこのお店を開くきっかけをオーナーのシモーネ・アルネトーリさんが教えてくださいました。

 以前、シモーネさんが家族とニューヨークへ旅行に行った時のこと。街角で「トスカーナ・ピザ」と看板を掲げるお店を見かけました。ピザ屋さん自体はよくあるものですが、この「トスカーナ」という言葉にインスピレーションを得たそうです。

 どうしてビビッときたかというと、それがとってもイタリアらしい観点なのです。

 イタリアは、19世紀にイタリア王国として統一されるまで、それぞれが独立国家であったため、地域性がとても強く残っています。トスカーナ地方で言えば、フィレンツェ、ピサなど、それぞれが別々の国家だったので、それらをまとめた地方の名称「トスカーナ」という概念よりは、フィレンツェならフィレンツェという発想が優先するので、この「トスカーナ」という呼称に重きを置く発想がイタリア人の彼には薄かったのです。でも、世界ではこれがひとつのブランドになり得るのだと気づいたのです。

 それはとても小さな気づき。イタリア事情を知らない人には「え、それで?」と思うほど小さなことですが、これをきっかけに彼の発想は一気に広がります。

 ケータリングの仕事を通して、本当においしいものを知り、たくさんの優良生産者と取り引きがあるのですが、その多くは丁寧な手仕事を続ける小さな生産者。そのおいしさをもっと広く世界に届けたくても、彼らの手では生産管理から受注・発送まですべてをまかなうのは大変です。

 そこで、そんな小さな生産者たちを「トスカーナ」という名でカテゴリー化することで、大きな力にまとめたい。それらのいいものをまとめて提供するお店をキーにして、素晴らしさを広めていこうというミラノ店は、その第1号。アンテナショップ的存在です。

トスカーナの自然豊かであたたかな雰囲気をテーマにコーディネートされた店内。居心地のいい空間です。

 2017年秋に試験的にオープンしたこのお店のおいしさは、すでに地元の人に浸透しているようで、産地直送のチーズやハムを買い求める人々を見かけました。

左:ハムやチーズは量り売りで、必要な分だけ買うことができます。
右:お土産にもなりそうなものがたくさん揃います。

 こちらのミラノをはじめとして、世界中に展開する計画があるそうで、シモーネさん曰く、もちろん日本にも出店計画中とのこと。このおいしさが日本の皆さんにも届く日はそう遠くはないようですよ。楽しみにしたいですね。最新情報はお店のホームページでチェックできます。

Toscanino(トスカニーノ)
http://www.toscanino.com/

藤原亮子 (ふじはら りょうこ)
イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー&ライター。東京でカメラマンとして活動後、'09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、取材・撮影・執筆活動をしつつ、イタリアの伸びやかな景色をテーマに写真作品も制作中。イタリアでの日々をつづったフェイスブックはこちら。 https://www.facebook.com/chococogogo

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文・撮影=藤原亮子