花園と化す美しい花の都プレトリア

ダーバンからヨハネスブルグまで飛行機で約40分、空港から車で約1時間。ヨハネスブルグから国際線で帰国せず、わざわざ足を延ばした理由は、ジャカランダを見るため。

 南アフリカ南部を周遊する旅で最後に訪ねたのは、首都のひとつであるプレトリア。この国は首都機能をプレトリア(行政)、ケープタウン(立法)、ブルームフォンテーン(司法)の3都市に分けていて、政府機能はほとんどこの街に集まっている。

 街の別名は「ジャカランダ・シティ」。約7万本のジャカランダが育つプレトリアは、春を迎える10月下旬になると、紫色に染まる。私が訪れたのは、ちょうど満開を迎えた頃。ジャカランダを見るために、この時期に旅を企画したのは大正解だった。

住宅街にも美しいジャカランダが満開。

 ジャカランダというのは、春から初夏にかけて、ラッパのような形をした紫色の花を咲かせる植物。中南米原産だが、19世紀に街を整備する際に植樹したものが、鉄分を多く含む土と穏やかな気候のもと、すくすくと成長。今や本場を凌ぐ世界一のジャカランダ並木ができている。

ジャカランダ並木の総距離は約650キロ。シーズンは街中が紫色に染まる。

 コロニアル様式の歴史的建造物が建ち並ぶ通りも紫色に染まって、まるで映画のワンシーンのよう。こんなとき、日本ならお花見宴会が開かれるものだけれど、南アフリカは公共の場での飲酒は法律で禁止されている。お祭り騒ぎをすることなく、日常のなかに美しい花の風景があるのが素晴らしい。

高さ9メートルのネルソン・マンデラ像が立つユニオン・ビルディングス。政府の中枢機関が集まる場所でもあり観光地でもある。

 頭上も、足元も、花、花、花……。周遊旅行のラストを飾ったのは、シーズン限定の可憐な花だった。最後に目に焼きついた風景のおかげで、ますます南アフリカの虜になってしまった。

【取材協力】
南アフリカ観光局

http://www.south-africa.jp/

芹澤和美 (せりざわ かずみ)
アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオ ノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.journalhouse.co.jp/

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文・撮影=芹澤和美