アメリカ合衆国西部に位置するコロラド州は、数多くの温泉を有するエリア。そこには、日本の温泉情緒とは趣を異にするユニークなカルチャーが花開いています。雄大なアメリカンロッキーに抱かれた“いで湯の里USA”を、温泉エッセイストの山崎まゆみさんが旅しました。

vol.03 パゴサスプリングス

温泉から眺める朝日は最高の美しさ

パゴサスプリングスで一番大きな施設である「ザ・スプリング・リゾート&スパ」の入り口にある石灰岩。

 コロラド州の南部に位置するパゴサスプリングス。「パゴサ」とは先住民族であるユート族の言葉で「ヒーリングウォーター」を意味する。この湯も先住民族を癒してきた歴史がある。

温泉が噴出する石灰岩は街のシンボルだ。

 街に入ると、ゆるやかな風に硫黄の香りが混じっていた。「うぅ、匂いからしていい湯だ~」と呟いてしまう。確かに、温泉成分は肌に優しい硫酸イオン、温まり効果抜群のナトリウムや硫黄成分等、13種類程のミネラルが豊富に含まれる濃い湯だ。

ギネスに登録された世界で最も深い源泉。

 世界で最も深い地熱層から温泉が湧きだしているということで、2011年8月にギネスに登録された。その深さは、現代では測定する機械がないということで、正確な数字はわかっていない。

 総湧出量は毎分300ガロン(1135リットル)。ここから引いた湯は、各ホテルにある温泉プールと、街中にある2カ所の立ち寄り入浴施設で利用されている。

「ザ・スプリング・リゾート&スパ」の敷地は、サンフアン川沿いに広がっている。

 私が泊まったのは、「ザ・スプリング・リゾート&スパ」。24時間入浴できるため、ホテル滞在時間の多くを温泉で過ごした。ここには大小23もの温泉プールがある。

左:温泉プールは23カ所にもおよぶ。
右:子供が元気に遊ぶ姿も。

 深夜にそのひとつに行くと、川風に吹かれながらアメリカ人が何時間も入っていた。ご高齢の夫婦が仲睦まじく、ご主人が奥さんのほっぺにキスする姿を見かけてしまった。ご夫婦はバツが悪そうな表情をしていたが、とても微笑ましかった。

子供立ち入り禁止の大人専用ゾーン。

 そして一度部屋で休んでから、早朝5時半にスタンバイして温泉に浸かりながら朝日が昇るのを待つ。ぐんぐん日があがり、瞬く間に朝を迎えた。

温泉から朝日を眺める至福のひと時。

 湯は茹でたての卵の匂いがする。硫黄成分には血管拡張作用があるため体がぽかぽかに。川からの風が心地よく、つい何時間も入ってしまった。

落ち着いた内装のホテルの客室。温泉から徒歩3分で部屋に戻れることもあり、水着の上にバスローブを着て、部屋と温泉を往復していた。

The Springs Resort & Spa
(ザ・スプリングス・リゾート&スパ)

所在地 165 Hot Springs Blvd., Pagosa Springs, CO 81147
電話番号 800-225-0934
http://www.pagosahotsprings.com/

2018.02.13(火)
文・撮影=山崎まゆみ