ダウントン・アビーの世界にうっとり
ヴィンテージ・ファッションの名店

ティン・ティン・コレクタブルズの店内。たくさんのアイテムがぎゅっと詰まった宝箱のようなショップです。

 20世紀初期の社会の変化に翻弄される貴族一家をえがいた英国の人気ドラマ「ダウントン・アビー」。グランサム家の姉妹たちが身にまとう優美なファッションに、ため息をついた方も多いのではないでしょうか。

 そんなドラマの世界に浸れるヴィンテージ・ショップが、マリルボンのアンティーク・モール、アルフィーの地上階にあるティン・ティン・コレクタブルズ(Tin Tin Collectables)です。

左:通りに面したウィンドウには、「ダウントン・アビー」でレディ・イーディスが着用したドレスが。レズリーさんが買い戻しできたのは、この1点のみ。
右:ダウントンの衣装では、こんなストールがドレスに作り替えられたと話すレズリーさん。フリンジもひとつひとつ手作業で取りつけられています。アールデコが流行するちょっと前、エドワーディアンのスタイルです。
オーナーのレズリー・ヴァーリンダーさん。品物の背後にあるストーリーをひとつひとつ教えてくれます。

 もともとサヴィル・ローのテイラーで働いていたオーナーのレズリー・ヴァーリンダーさんが、1990年にこの場所にオープン。

 ここでは1920年代、1930年代を中心に婦人物の洋服や服飾小物を取り扱っています。

 レズリーさんの目利きは、実は業界内では知られるところで、高級ファッションブランドのデザイナーが参考資料として大量買いに訪れるほか、「ダウントン・アビー」をはじめ、「未来を花束にして」や「女王ヴィクトリア 愛に生きる」など、数々の歴史もの映画やドラマの衣装サプライヤーも務めています。

プラスチックではなくガラスのビーズを使っているため、驚くほど重いドレス。その重さが身体の線を美しく描きだしてくれるのだそう。

 もともと仕立ての経験豊富なレズリーさんですが、「私が手を加えるのは、ボタンつけくらいですね。手を加えてしまうと、歴史的な価値が損なわれてしまうので」とのこと。

 それでも買った人が大きく手を入れることはもちろん多く「例えば、ダウントンの衣装の場合、スタイリストが大判のフレンチスタイルのストールを大量に購入していきました。1枚800ポンドくらいするストールをこんなにたくさんどうするのだろう、と思っていたら、ドレスに作り替えるためだったんですね。メタルで装飾が施された当時のストールは、その重さゆえに美しく身体の線に沿うのです」と、話します。

1920年代のトップ。シルク・デヴォアと呼ばれるシフォンにベルベットを重ねたファブリック。シフォンのプリント柄とベルベットのうねが絶妙な模様を作り出しています。

文・撮影=安田和代(KRess Europe)