かつて二重のフェンスに囲まれていた
国立自然公園シュマバ

シュマバ国立公園内の森はマイナスイオンがたっぷり。

 チェコとドイツ、オーストリア国境沿いには、美しい国立自然公園に指定されているシュマバの山々が連なります。

 チェコ国民にとってのアウトドアレジャーの人気エリアで、春から秋にかけてはハイキングやサイクリング、湖上でのウォータースポーツ、そして冬にはスキーと、年間を通してさまざまなアクティビティを楽しめます。手つかずの大自然は緑が濃く、都会生活で疲れた現代人のリフレッシュには最高の場所となっています。

 しかし1989年に社会主義時代が終焉するまでは、現在のように気軽に立ち入ることはできませんでした。

 その理由は、西側諸国(オーストリアと当時の西ドイツ)との国境にはさまれた土地だったから。当時のチェコスロバキアをはじめとする社会主義諸国からの亡命者たちが、自由を求めて移動したルートだったのです。

ドイツとチェコの国境沿いに張られていた二重フェンスとコンクリートの塊。

 現在の国境にも、当時の二重フェンスが一部残されています。フェンスの手前に置かれている大きなコンクリートの塊は、車の突進侵入を制御するためのものだったそうです。

 日々の生活においての自由がなかった社会主義国家の人々は、このフェンスをなんとか乗り越えて、西側の世界に亡命を試みるのですが、厳重に警戒された国境付近はそうそう簡単に通りぬけることはできなかったそうです。監視員と、放し飼いにされた攻撃的な犬が常に見張っていたのです。

国境のそばに立つ山小屋風ホテル。館内には、この付近を写した古い写真パネルが展示されています。

 かつて二重フェンスに囲まれた地には現在、かわいらしい山小屋風ホテル「ホテル アルプスカー ヴィフリードカ」が立っています。シュマバ国立公園内でも、一般車両の乗り入れが禁止されているブチナ(Bučina)という場所に位置し、晴れている日にはアルプスまで展望できます(ホテルの宿泊者は車両の乗り入れが可能ですが、事前に問い合わせが必要)。

ホテル館内に展示された写真パネル。亡命を試みた人々の姿に、胸がつまります。

 また、このホテルから歩いて3.7キロの森林のなかには、チェコの大地を流れるヴルタヴァ川の源流も見られます。小さな湧き水がやがてプラハで大河になる様子は想像もつきません。社会主義時代の亡命者たちもここで渇いた喉を潤したのかもしれません。

なだらかな稜線が美しいシュマバの山々。

Hotel Alpská Vyhlídka
(ホテル アルプスカー ヴィフリードカ)

所在地 Bučina 149, 384 93 Kvilda
電話番号 380-428-888
http://www.alpskavyhlidka.cz/cz/

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文・撮影=クレメントゆみ子