気になる世界の街角から

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近代建築の巨匠がこだわりを貫いた
チェコに立つ邸宅は必見の世界遺産

チェコの世界遺産トゥーゲントハット邸

 名建築の宝庫チェコにおいて、絶対に見ておきたい近代建築のひとつをご紹介します。プラハより東へ約200キロに位置するブルノ市の世界遺産「トゥーゲントハット邸(Vila Tugendhat)」。近代建築の世界三大巨匠のひとりといわれる、ミース・ファン・デル・ローエ(以下ミース)が1930年に完成させた邸宅です。

トゥーゲントハット邸。庭からの全景。(C)David Zidlicky

 パリのサヴォア邸を手がけたフランスの建築家ル・コルビュジエが提唱した「近代建築の五原則」のなかでも「自由な平面」というコンセプトを守り抜き、あえて壁で部屋を仕切らない機能的な平面空間が特徴的な邸宅です。

リビングエリアは開放的な空間。大きな窓は自動全開できるシステムとなっており、開けると外の庭園とリビングが一体化する。(C)David Zidlicky

 建物の構造は3階建て。邸宅の地下1階部にはすべてのユーティリティシステムが完備されており、実用的な空間となっています。地上1階部は主に生活エリア。特に人々が集まるリビングエリアは仕切りのない開放的な空間になっており、機能的な生活ができる工夫が凝らされています。地上2階部は大きなエントランスホールや寝室などがあり、どの空間も大きな窓からたくさんの自然光が注ぎ、かつ窓からはブルノ市の全景が見られる最高のロケーションとなっています。

リビングに隣接するミーティングエリア。ここでは1992年にチェコとスロヴァキアの解体調印式が執り行われた。(C)David Zidlicky

 ミースはこの邸宅で自分の建築へのこだわりをすべて貫きました。邸宅の依頼主が細かなリクエストをしても「反対するのなら、この仕事はできない」と言って、あくまでも自分が持つ頑ななまでの方針を変えなかったそうです。空間そのものはもちろんのこと、材料にもこだわりました。モダニズムにとって重要なもののひとつが、余計な装飾のない洗練された材料にある、という彼の言葉通り、シンプルに見せながらも高価で貴重な材料が世界中から取り寄せられ、各空間に贅沢に取り入れられています。

北アフリカのアトラス山脈地方の縞瑪瑙(しまめのう)で仕切られたリビングの空間。夕方、西日が差し込むと人間の脈の流れのように見える。(C)David Zidlicky
左:エントランスエリアの床は全面イタリアのトラバーチン。(C)David Zidlicky
右:東南アジア産の紫檀(したん)で区切られた部屋。(C)David Zidlicky

 邸内にある家具はすべてこの邸宅のためにデザインされた家具で統一されています。ほとんどの家具は高級木材(紫檀、黒檀など)ないしはスティール製で、特にリビングにある椅子はブルーノチェアと呼ばれ親しまれています。

ブルーノチェア。(C)David Zidlicky

 ミースがこだわり抜いて完成させたこの邸宅、一体どんな人物が住んでいたのでしょうか?

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2015.11.05(木)

文=クレメントゆみ子

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