■星野リゾート 界 アンジン
日本の地方の魅力を掘り起こし、プロデュースすることで日本の観光に一石を投じてきた星野リゾート。その各施設を訪れ、地方らしい遊び方、旅の仕方を再発見していこうというシリーズが「日本を遊ぼう!」。
今回から前後篇で紹介するのは、伊東にある「星野リゾート 界 アンジン」と「星野リゾート 界 伊東」。東京から特急踊り子号に乗れば105分で到着するこの王道の温泉地で、“界めぐり”を楽しみます。まずは、2017年4月にオープンしたばかりの「星野リゾート 界 アンジン」へ。
その名の由来は
“青い目のサムライ”
伊東駅から車で約5分とすぐの「星野リゾート 界 アンジン」に到着すると、船のデッキのようなアプローチで手渡されるのが“ボーディングパス”。
そう、この宿のテーマは“船旅”。
ロビーの壁面には、実際の船を解体して作られたマリンアンティークのオブジェが飾られている。コーヒーやハーブティーなどを自由に楽しめるトラベルライブラリーには、テーブルの上に美しい帆船模型が置かれ、ストライプのソファーに座って船や航海の本を見たり、アナログのプレイヤーでLPレコードを聴いたりと、どこか異国の地への船旅に赴くような雰囲気が漂う。
目の前の道路を挟んだ海辺には、江戸時代の日本に漂着した英国人航海士、ウィリアム・アダムスの彫像が立つ。
現在、この宿の立つ場所で、アダムスは、日本で初めての西洋式帆船を造ったのだ。徳川家康に重用され、後に三浦按針という日本名を持つ“青い目のサムライ”となったウィリアム・アダムス。モダンなインテリアの「星野リゾート 界 アンジン」の名はこの按針から来ている。
ロビーを含めて館内3カ所に飾られている帆船の模型は、按針が造船し、初めて日本から太平洋を渡った“サン・ブエナ・ベントゥーラ号”という西洋式帆船なのだ。
客室45室はすべて海を望み、舵や櫂など実際に使われていた船具や船の部分を使ったアートワークが船の旅を思わせる。特に最上階の「オーシャンビュースイート」は全面ガラスの向こうに大海原が見えて、ちょっと漕ぎ出す帆船に乗船したような気分だ。
2017.08.26(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=平松市聖