20世紀に発見された
ヒンドゥー教遺跡

 世界的なブランドホテルが続々と誕生し、今やベトナム屈指のリゾート地となったダナン。日本の雑誌やテレビなどでも特集が組まれ、一度はその名を耳にしたことがある人も少なくないかもしれません。さらに、現在は日本からの直行便も運航しており、世界遺産であるホイアンとあわせてベトナム中部を訪れる旅行者は、年々増え続けています。

山々に囲まれ、自然の気を集める盆地に建つミーソン遺跡。

 しかし、そんな中部観光の目玉のひとつでありながら、郊外にあるためか、まだ訪れる人の少ない場所があります。それが、かつて2世紀から19世紀までの長きにわたり、ベトナム中部沿岸地方に一大王国を築いたチャンパ王国の聖地、ミーソン遺跡です。そこで今回は、リゾートステイの合間に多民族国家であるベトナムの歴史もちょっぴり学べる、こちらの遺跡をご紹介します。

近代的なビルが建ち並び、各国の旅行者が訪れるようになったダナン。

 ミーソン遺跡は、ベトナムに暮らす54の民族のひとつ、チャム族の祖先である古チャム人の聖地とされる場所。ホイアンから南西へ車で約1時間の山中にあり、ダナンやホイアンなどの街から、現地発のオプショナルツアーで訪れるのが一般的です。

 ベトナムの宗教といえば仏教を想像しがちですが、チャム人が信仰していたのはヒンドゥー教。そのためミーソン遺跡にはカンボジアのアンコール遺跡群を思わせるタワーやレリーフが見られ、その希少性から1999年にはユネスコの世界遺産にも登録されました。

日本の協力により建てられた、遺跡入口にある展示資料館。

 とはいえ、実はこの遺跡が発見されたのは、なんと20世紀に入ってからのこと。ベトナム戦争時にアメリカ軍の空爆により遺跡の大半が破壊されましたが、発見当初にフランス極東学院により残された綿密な調査資料を基に、現在少しずつ修復が進められています。

文・撮影=杉田憲昭