vol.21 ペルー(2)
伝統料理への敬意を込めた
モダンペルー料理の集大成
ペルー料理をガストロノミーに昇華させ、世界に知らしめた立役者は、ガストン・アクリオである。
ペルー人に自国の料理に対する認識を深め、自信と誇りを持たせるために、南米最大の食万博「ミストゥーラ」を開催し、貧しい子供のための料理学校を作る活動も行なっている。また彼は、南米を中心に約50のレストランを経営している。
中でもサン・イシドロ地区にある「Astrid & Gastón(アストリッド・イ・ガストン)」は彼の旗艦店となる。建物は、Casa Moreyraという築300年を超える白亜の歴史的建造で、あたりを睥睨するかのような荘厳さを漂わせている。
13皿構成のテイスティングメニューは、ペルーの食材を使い、伝統料理への敬意を込めた、モダンペルー料理の集大成である。
それではその内容をご紹介しよう。
#01 Mandingo bed
アミューズは、アンデス文化にスペイン中国、日本など、移民たちによる各国の食文化が入り交じったのがペルー料理であるというメッセージが込められたアミューズの盛り合わせ。「異国文化はベッドの上で生まれる」というユーモアが込められ、スペイン、イタリア、日本、中国などの食文化とペルー食材を掛け合わせた料理が並ぶ。
#02 パンと各種バター
#03 19世紀のセビーチェ復活
スズキのセビーチェ。スズキ自体の質が良く、優しい酸味や、芋(カモテ)のホックリした甘みと重なると、優美さを醸す。
#04 危険なセビーチェ
野菜のセビーチェ。カモテ(芋)、ビーツ、各種葉やチーズアイスで構成。優しい味付けの中から強烈な辛さがにじみ出る。一見優しいと思っていたのに、実は強辛い。危険である。
#05 nikkei Sea urchin
日系料理へのオマージュ。ウニ、そば、海苔、トビコ、ウズラの卵。日本人が食べるとやや奇怪に思われるかもしれない。
#06 The Bachiche scallops (一皿目)
二種類の調理法を使った帆立料理。一皿目は、生帆立のバニラ風味のクリームソース和え。生帆立の素っ気ない色気がヴァニラによって艶が出る。
#07 The Bachiche scallops (二皿目)
二皿目は、加熱した帆立。ソースはライムと柑橘系のルクマ。ルクマの丸い酸味が、絶妙な火の通しの帆立とまろやかに抱き合う。
#08 Arequipeno egg
サービスが、「卵の天ぷらです」と笑ってだした。黄身の甘みとチュペ(海老のソース)が濃密に溶け合う。黒タピオカのような粒は、クシュロという海ブドウのような海藻で、口をリフレッシュさせる。
2017.03.16(木)
文・撮影=マッキー牧元