チークが主役だった時代のメイクを再現

 メイクアップが歴史上いちばんうまかったのは、いつの時代の誰か? もはや比較のしようもないけれど、現代に残る肖像画をいろいろ見てみると、やっぱりフランス、ルイ王朝の女たち。マリー・アントワネットや、彼女に影響を与えたポンパドール夫人などが、ズバ抜けてオシャレで、宮殿が流行の発進地ともなったと言われる。しかし革命前の女たちはやっぱり“やりすぎ”のきらいがあり、フランス革命後、それをもっと落ち着かせ、もっと洗練させたのが、メルヴェイユーズと呼ばれた貴婦人たちだったとされる。

 彼女たちのメイクのキモはと言えば、もう間違いなくチーク。
“ルージュ”と言えば今は口紅のことだけれど、昔は“ほお紅”もルージュと呼び、むしろチークがメイクの主役だった。口紅は今の50倍くらい持ちが悪かったはずで、そういう事情もあるのだろうが、チークこそ女をもっとも魅力的に官能的に見せるメイクという概念があったに違いないのだ。

 奇しくも今はチークの時代。女をいちばん美人映えさせると知ったから。で、当時のメイクのココロを、そっくり再現できそうな化粧品が生まれた。フランス菓子の原点とも言えるマカロンを、今のスタイルにしたスイーツの老舗、ラデュレがコスメティックを発表したのだ。フランス語で“伊達女”の意味をもつレ・メルヴェイユーズ ラデュレがそれ。現代コスメでは例を見ないカメオつきのクラシカルな容器におさめられたのは、最先端のテクノロジーで再現された貴婦人たちのほお紅だった。

立体感やライブ感など、女性の“表情美”を決定づけるチーク3種

a~eチークベースをひとさしした後、このチークカラーを重ねると、鮮やかで奥行きのある発色に。
プレストチークカラー レフィル 全20色(写真aは14、bは06、cは01、dは07、eは18) 各¥3990、同ケース(ブラシ入り)¥1575/レ・メルヴェイユーズ ラデュレ

f本物のバラの花弁のようなフェイスカラーは使い心地も優雅。チークベースの後、こちらのフェイスカラーを重ねると、よりナチュラルな発色に。フェイス カラー ローズ ラデュレ レフィル全3色(写真fは02)
各¥7350、同ポット ¥3150/レ・メルヴェイユーズ ラデュレ

 昔は、頬に血色をさすために実際バラの花びらを使っていたとも言われるが、その化粧行為を現代コスメで再現した花びら形のチークがともかく圧巻。お菓子入れのようなケースのフタを開けると、本当に花びらが一枚一枚入っている。香りまで摘みたてのバラのよう。ブラシで優しくなでることで、程よく粉とれし、とても自然な発色が実現する。そこまで計算ずくなのは見事という他ない。エアイン効果でブラシへのとれを良くするなど、本当にキメ細かい配慮が利いている。一方、クリームチークベースは、目の下から口角まで降ろした三角形の“微笑みをつくるトライアングル”にひとさしすることで、生き生きした表情のベースをつくり、見事な幸せ顔をつくる。

 もう一品、プレストチークカラーは携帯用? 家庭用と携帯用をハッキリ分けていた昔のメイク習慣に倣うのは何だかそれだけでワクワクする。カメオのブローチのようなパッケージは、最後まで使い終えるとカメオの立体が現れるという手の込んだつくり。この化粧品、本気なのだ。

 ともかく、美人メイクの本当のルーツに戻ってメイクするような、おごそかな気持ちになれるはず。そうやってていねいに丹精込めてつくった顔は、それだけで人をハッと振り返らせる。ラデュレが目指したのは、そういう存在美の再現。歴史上いちばん美しくキラキラしていたかもしれない女たちをお手本に。

微笑みをつくるトライアングル

  レ・メルヴェイユーズの貴婦人のように、チークベースは“微笑みをつくるトライアングル(目の下から口角まで縦に三角形に降ろした、表情美をうむためのゾーン)”に塗ることを推奨している

齋藤薫 Kaoru Saito
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『人を幸せにする美人のつくり方』(講談社)、『大人になるほど愛される女は、こう生きる』(講談社)、『Theコンプレックス』(中央公論新社)、『なぜ、A型がいちばん美人なのか?』(マガジンハウス)など、著書多数

Column

齋藤 薫 “風の時代”の美容学

美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。

2012.02.02(木)
text:Kaoru Saito
photographs:Yasuo Yoshizawa(still life)

CREA 2012年2月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

お金に愛される女の生き方

CREA 2012年2月号

お金がなくても幸せとはもう言えないから
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特別定価 670円(税込)