【次に流行るもう一曲】
TRY TRY NIICHE「Cガール」

メロディとコードのセンスが光っている

伊藤 2曲目はTRY TRY NIICHEの「Cガール」。ピアノ・ヴォーカルのヲクヤマは5月に行ったクリエイターズキャンプ真鶴のコーライティング・セッション〈外部サイト〉にも参加しています。

山口 そうでしたね。伊藤さんの音楽クリエイター人脈が広がっているなと思って見ていました。

伊藤 今年の初めに知り合いから、コーライティングに興味があるということでヲクヤマを紹介されました。早速コーライティング・セッションをしたんだけど、とにかくメロディとコードのセンスが光ってた。緊張していたのか終始表情はかたかったけど、黙々とピアノを弾きながら鼻歌する、その姿だけでも新しいものが生まれる気配がした。そんなこともあって完全招待制のキャンプにも声をかけたんだけど、キャンプ中はお互い忙しくて話す暇はなくて……。でもアフターパーティで見た彼は“梅雨のあとにきた夏晴れ”みたいな笑顔をしていて、コイツいい顔してんな、って思ったのを覚えている。これからもっともっと良い曲を生む予感っていうか。

山口 アーティスト活動をしている、しかもバンドのヴォーカルが、同時並行でプロのクリエイターとして楽曲提供もしようとするって、アメリカなんかでは普通のことですが、日本では珍しいですよね。やっと日本にもそういう若手音楽家が出てきたんだなと楽しみにしていました。ブルーノ・マーズが世に出て行ったような形が、日本でも増えていいですよね?

伊藤 そうですね。そういう柔らかいマインドをもっているところもUltronならでは。アーティストは裏方の仕事したら終わる、そんな考え方が最近まで音楽業界のメーンストリームでしたからね。これからはそういう考え方の壁も壊していかないと。そういえば昨日の夜、ヲクヤマとコーライティング・セッションした曲のリリックが、彼から送られてきたんだけど、リリックもいいし(笑)。

山口 ディレクターであり、コーチであり、トレイナーであるという伊藤涼の幅の広さが、ヲクヤマ君みたいなタイプには、役に立ってあげられるのではないですか?

伊藤 当然です(笑)。今回、スペースシャワーミュージックからリリースされる1stミニアルバム『FLOWERING』の4曲目「Cガール」を聴いてみて、やっぱ彼のセンスをビンビン感じる。バンドだけじゃ収まり切れない、広がりたいというパワーを感じるし、もっと言えばまだまだ解放しきれていない表現、そこにまだまだ手を伸ばせるポテンシャルを感じる。

山口 声に魅力があるんだなって今更ながら思いました。今度、ライブ観に行きましょう。

TRY TRY NIICHE『FLOWERING』(「Cガール」収録)
スペースシャワーミュージック 2016年7月20日発売
1,500円(税抜)
■TRY TRY NIICHEは、2015年7月に活動を開始。その後の短期間に、スペースシャワー主催のオーディション「DayDreamBeliever」でグランプリを獲得するなど、さまざまなコンテストで好成績を残す。また、定期的に行っている自主企画ライブは毎回ソールドアウトを記録している。本作が初の全国流通盤となる。
■オフィシャルサイトURL http://trytryniiche.wix.com/band

【動画サイト】
「Cガール」

URL https://www.youtube.com/watch?v=MK-d4726X7g

山口哲一 (やまぐち のりかず)
(株)バグ・コーポレーション代表取締役、コンテンツビジネス・エバンジェリスト、音楽プロデューサー。「デジタルコンテンツ白書」(経済産業省監修)編集委員。経済産業省「コンテンツ産業長期ビジョン検討委員会」委員。国際基督教大(ICU)高校卒。早稲田大学在学中から音楽のプロデュースに関わり、中退。1989年、バグ・コーポレーションを設立。音楽プロデューサーとしてSION、村上“ポンタ”秀一のマネージメントや、東京エスムジカ、ピストルバルブ、Sweet Vacationなどの個性的なアーティストをプロデュースする一方、音楽ビジネスとITに関する実践的な研究を行っている。プロデュースのテーマは、新しいテクノロジーの活用、グローバル展開、異業種コラボレーション。2011年頃から著作活動を始め、国内外の音楽ビジネス状況の知見を活かし、音楽(コンテンツ)とITに関する提言を続けている。エンタメ系スタートアップを対象としたアワード「START ME UP AWARDS」をオーガナイズし、プロ作曲家育成「山口ゼミ」や「ニューミドルマン養成講座」を主宰するなど、次世代の育成にも精力的に取り組む、異業種横断型のプロデューサー。近著に『新時代ミュージックビジネス最終講義』(リットーミュージック)、『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』(ローソンHMV)、『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック・伊藤涼との共著)、『とびきり愛される女性になる。 恋愛ソングから学ぶ魔法のフレーズ』(ローソンHMV・伊藤涼との共著/「ラブソングラボ」名義)、『DAWで曲を作る時にプロが実際に行なっていること』(リットーミュージック)、『世界を変える80年代生まれの起業家 起業という選択』(スペースシャワーブックス)、『プロ直伝! 職業作曲家への道』(リットーミュージック)などがある。
Twitter https://twitter.com/yamabug
BLOG http://yamabug.blogspot.jp/
詳細プロフィール http://yamabug.blogspot.jp/2010/05/profile.html

伊藤涼 (いとう りょう)
音楽プロデューサー、ソングライター。「青春アミーゴ」などのミリオンセラーをプロデュース、後にフリーランスに。ソングライターとして、乃木坂46「走れ!Bicycle」、AKB48「ここにいたこと」などの作品がある。作詞アナリスト、フードミュージックプロデューサーとしても活躍。論理的で明晰な分析力に注目。著書に『作詞力 ウケル・イケテル・カシカケル』(リットーミュージック)、山口哲一との共著に『最先端の作曲法 コーライティングの教科書』(リットーミュージック)がある。
マゴノダイマデ・プロダクション http://www.mago-dai.com/
ブログ「伊藤涼の音楽」 http://ameblo.jp/magodai/
伊藤涼が主宰する作詞研究室リリック・ラボ 
https://www.facebook.com/lyric.laboratory/?ref=ts&fref=ts

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2016.07.15(金)
文=山口哲一、伊藤涼