音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

 さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?

【次に流行る曲】
DJみそしるとMCごはん「OPQ EP」

2人組かと思いきや女性ソロアーティスト!

伊藤 今回はDJみそしるとMCごはんっていうアーティストです。食べ物の音楽を作るフードミュージックプロデューサーとしてはチョー気になっていました(笑)。打ち合わせでキューンミュージックに行くことがあったんですけど、サンプルCDみつけて、もらっちゃいましたからね。聴いてみたら、超ゆる系ラッパーでした。

山口 僕はノーマークでした。伊藤さんのライバル登場じゃないですか?(笑)

伊藤 ライバルって感じではないですけど、なんか同じ方を向いているアーティストがいたってことと、この感じが世の中に受け入れられて、ちゃんとメジャーデビューしているところがよいですね。なんていってもゆるさ加減がハンパないですからね、色んな意味で衝撃だし、とうとうこの時代が来たかって感じですよ。

山口 2年前にヒットした、iPhoneアプリ「ラップムシ」を思い出しました。手づくり感とゆるさを売りにしながら、計算はしっかりされているし、実はクオリティが高い。と言いつつ、クリエイターのパーソナリティは反映されていて、本人の趣味性の高い作品である。野暮を承知で共通点を解説すると、そんな感じです。

伊藤 「ラップムシ」ですか? 聞いたことないんですけど、レシピ系ですか? どんなアプリか教えてください。でも「ラップムシ」って字面からしてゆるいですもんね。あまり今まで気にしていませんでしたけど、ゆる文化というか、ゆるピーポーっていうのが存在しているんですね。

山口 「ラップムシ」はiPhoneでDJプレイができるアプリです。無料なので落としてみてください。この「DJみそしるとMCごはん」はどんな人たちなんですか?

伊藤 ミュージックビデオには2人の女の子が出演していたので、当然2人組だと思っていたんですけど、ひとりの女性アーティスト。トラック、リリック、アートワーク、ミュージックビデオなど全てを自ら制作する、超自家製ラッパーです。

山口 へー。面白いですね。

伊藤 ラップがレシピになっている彼女の切り口は面白いですし、センスの良さが光っていますね。すべてをセルフプロデュースしているんだろうし、手作り感満載。まるで自主制作の極みみたいなパッケージのCDをリリースしているんですよ。正直、これってまさに僕が手がけるプロジェクト、キッチンミュージックでCDを出すならこんなパッケージって、イメージしていたものなんで、親近感を覚えずにはいられないんですね。

2014.09.30(火)
文=山口哲一、伊藤涼