佐々木俊尚のニュース解体新書

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中高生が被害者ではなく加害者に! 
交通違反キップが切られる「危険自転車」

【KEY WORD:危険自転車】

 千葉地裁で2016年2月、20歳の男子大学生にたいして禁固2年6か月、執行猶予3年の有罪判決がありました。前年6月、この大学生はイヤホンで音楽を聴きながら自転車を走らせていて、横断歩道をわたっていた77歳のおばあさんにぶつかり、死なせてしまったのです。赤信号を無視して、しかもスピードを時速25キロも出していたそうです。

 危険な自転車があいかわらず横行しています。こういう状況を改善しようと昨年6月には道交法が改正され、自転車のルールが厳しくなるのとともに、危険行為とみなされた場合には自動車の運転と同じように交通違反キップが切られることになりました。3年間に2回キップを切られると、3時間もある講習を5,700円出して受けなければなりません。

 スタートから昨年末までの半年間に、キップが切られたのは7924件。半分近くが信号無視だったようです。ちなみにいちばん多かったのは大阪で、2600件あまりもありました。半年のあいだに2回キップを切られて講習を受けた人は全国で7人いたのですが、このうち5人は大阪の人だったそうです。

 「自転車の安全利用促進委員会」という団体が、どういう人たちが事故を起こしているのかという調査をしています。とくに興味深いのは、中高生の事故が多いこと。人口1000人あたりで、どのぐらいの割合で事故を起こしているのかという率を調べてみたところ、16~18歳(だいたい高校生)が5.6%でトップだったそうです。ついで13~15歳(だいたい中学生)が4.1%。これが19~24歳になると2.0%、25~54歳では1.1%に減っています。

 まあ東京などの都市部はともかくとして、大人になると自転車から自動車に移ってしまってめったに自転車には乗らなくなるという人が多いでしょうから、これは妥当な数字かもしれません。ただ中高生のこれらの事故のうち、約7割は信号無視などの法令違反が原因だったということもわかっており、やはり道交法をきちんと守ってもらうということが絶対に必要なようです。自転車の中高生というと交通事故の被害者になりやすいイメージがありますが、実は加害者になる可能性があり、その場合には大きな代償が待っているのだということを知らせなければなりません。

自転車後進国、日本の変えるべき「文化」

 日本ははっきり言って、自転車後進国です。自転車専用通行帯や自転車道は整備されておらず、自転車に乗っている人たちもほとんどルールを守っていません。右側通行で歩道を突っ走ってくる自転車なんてのは、ごく普通の街の景色になってしまっていますよね。かつては大半がママチャリでしたから、速度が出ないため危険度も低かったと言えますが、最近はロードレーサーやクロスバイクが普及し、またママチャリも電動アシスト化して、速度が上がっています。冒頭に紹介したように、時速25キロも出して音楽を聴きながら走っているような人はけっして珍しくはありません。

 日本はこういう自転車の「文化」になってしまっており、これを変えるのは容易ではないと思います。実際、昨年の道交法改正の後でも、歩道を自転車で走っている警察官の姿はよく目にしました。「警察官が道交法守ってないじゃん!」なのです。

 これから長い年月をかけて、そういう文化を正していくしかないんでしょうね。警察がやっきになって取り締まるだけでは、なかなか変わらないでしょう。

佐々木俊尚(ささき としなお)
1961年兵庫県生まれ。毎日新聞社、アスキーを経て、フリージャーナリストとして活躍。公式サイトでメールマガジン配信中。著書に『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『キュレーションの時代』(ちくま新書)、『家めしこそ、最高のごちそうである。』(マガジンハウス)、『自分でつくるセーフティネット』(大和書房)など。
公式サイト http://www.pressa.jp/

2016.03.22(火)

文=佐々木俊尚

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