カラブリアは、“辛ブリア”!?
イタリア随一の唐辛子王国へ!

 ブーツのカタチをしたイタリア半島。南の先端、つま先から甲あたりに位置するカラブリア州は、辛い料理で知られています。辛い料理と言えば、韓国や東南アジアの料理を思い浮かべてしまいますが、イタリアでは、カラブリア=ペペロンチーノ(唐辛子)。料理にはもちろん、保存食にもたっぷり唐辛子を使った名産品が数多くあります。

唐辛子まみれのパンチェッタ! 辛いながらも味わい深い仕上がりに。

 唐辛子入りのサラミやサルシッチャ、丸い唐辛子にツナとカッペリを詰めたペペロンチーニ・ピッカンティ・リピエーニ、そして知る人ぞ知る「ンドゥーヤ(Nduja)」! 豚の脂肪部位と大量の唐辛子を練ってペースト状にし、豚の腸に詰めて燻製にした保存食で、パンに載せてブルスケッタにしたり、パスタやピッツァ、料理の調味料にしたり。使い方もさまざまな、カラブリアを代表する伝統食材のひとつです。

これがンドゥーヤ。オリーブオイルを加えて柔らかくしてパンに塗る。

 辛いながらも旨み豊富なカラブリア産の唐辛子、ペペロンチーノ・カラブレーゼにその特徴があるのか、一度食べたら病みつきになりそうな悪魔的な”辛ウマ”さのンドゥーヤ。すでに日本にも輸出されているので、ご存じの方も多いかもしれませんね! 赤玉ねぎの町、トロペア近くのスピリンガが名産地として知られていますが、カラブリア全土で作られ、そして愛されています。

カラブリアの名産保存食材。右がンドゥーヤを載せたパン。手前から時計回りに、ソップレッサータ・カラブレーゼ・ドルチェ、サルシッチャ・ピッカンテ、ソップレッサータ・カラブレーゼ・ピッカンテ。
ンドゥーヤや辛いサラミなどの名産豚肉加工品工房、チッコピエディにて。豚の解体中!

 しかし、なぜにカラブリアでは唐辛子がこんなにも浸透しているのでしょう? カラブリアで唐辛子が栽培されるようになったのは、16世紀頃。クリストフォロ・コロンボ(クリストファー・コロンブス)によって、新大陸からスペイン経由でカラブリアに渡ったとされています。栽培に適した気候だったこと、そして政治的な問題から貧しい暮らしを強いられていた庶民の間で「安価に手に入るスパイス」として重宝がられ、瞬く間に広まったと言われています。

オリーブオイルとニンニク、大量の唐辛子でシラスをさっと炒めた一品。

 19世紀中頃のカラブリア出身のジャーナリスト、ヴィンチェンツォ・パドゥーラの記述によれば、「お金さえ見たことがない庶民」の間では、物々交換にも使われていたとか。1950年代になっても貧しい地域では、唯一の調味料だったという唐辛子。食品を保管する際の保存料としても活用されてきました。貧しい暮らしのなかで生まれた唐辛子の食べ方や利用法が、今も受け継がれているというわけです。

 次ページでは、悪魔的な辛ウマさの珍味、魚編。「サルデッラ」をご紹介しましょう!

文・撮影=岩田デノーラ砂和子