極上のビールと民族色豊かなミャンマー料理を食す

ミャンマー料理を一言で言い表すなら、「油たっぷりのカレー」。たいてのレストランにはカレーが何種類もあって、好きなものを選ぶシステムになっている。

 タイ料理やベトナム料理には馴染みがあっても、なかなかイメージが思い浮かばないのがミャンマー料理。ミャンマー料理とひとくちにいっても、この国は135の民族が暮らす多民族国家で、味はそれぞれに異なっている。また、隣接するインドや中国、タイの影響も受けているため、バラエティは豊かだ。

油っこいのに、クセになる。そして野菜もたっぷり食べるのがミャンマー流。

 しいていえば、国民の7割を占めるビルマ族の料理が、国の代表的な料理といえる。

 最もよく食べられているのが、カレーを使った煮込み料理だ。ニンニクと生姜、タマネギをたっぷりの油で炒め、そこへ野菜や肉を入れ、煮詰めて水分を飛ばして作られる。口にしたときの印象は、「スパイス控え目、油たっぷりのカレー」。これほどオイリーなものを食べていながら、スリムな女性が圧倒的に多いのは不思議でならない。

発酵食品を多用しているシャン族の料理はあっさりとしていて、日本人の口にも合う。ヤンゴンは、シャン料理のレストランも多い。

 朝市やマーケットでは、庶民のおやつ、「モン・リンマヤー」もあちらこちらで売られている。直訳すると、「夫婦のお菓子」。半球を2つくっつけて丸くするため、そう呼ぶのだそう。焼き方も形もたこ焼きにそっくりだが、中身は米と豆と油と塩。安くて柔らかくておいしいお菓子は、老若男女に愛されるストリートフードだ。

左:朝市で見かけたのは、たこ焼き風のお菓子、モン・リンマヤー。中身は米、豆、油、塩。
右:こちらは自家製ヨーグルト。できたてを素焼きの容器に入れてくれる。

 ミャンマーに来たのならぜひ味わいたいのが、国産ビール。国際的なビールコンテストでなんども受賞しているミャンマービールは、キレとコクがあって飲みやすく、ローカルにも大人気だ。

 おつまみには「ラペットゥ」を。発酵させた茶葉にピーナッツや揚げニンニク、干しエビ、ゴマ、豆、唐辛子などを混ぜ、塩とピーナッツオイルを和えたもので、定番のお茶請けだが、案外とビールに合うのだ。

左:食堂から高級レストランまで、ビールといえば基本的にミャンマービール。
右:スーパーや土産物店でもよく見かけるラペットゥは、ミャンマーの国民食。

 日没後、ローカルで大いに賑わうのが、ビアパブ通り。生ビール(もちろん、ミャンマービール)を飲ませてくれるオープンエアのパブがずらりと並んでいる。どの店も軒先で串焼きのいい香りを漂わせていて、これをつまみにビールを楽しむのが定番のスタイルだ。

魚や肉、魚のつみれなど、ずらりと並ぶ食材のなかから好きなものを選んで焼いてもらうのが、ビアパブのシステム。

 驚くべきは、生ジョッキ1杯500チャット(約50円)前後という価格。徐々に値上がりしてはいるものの、ミャンマー全体の物価からしても安い。日本の赤提灯気分で楽しめるとあって、オープンエアのテーブルでは、乾杯するグループがあちこちに。

左:ミャンマーの人たちはビール好き。こんなにおいしい国産ビールがあるから、それも当然。
右:ビアパブの軒先にあるのは、おつまみの串焼き。日本の焼き鳥屋を彷彿とさせる風景に、思わず親しみが湧く。

 そんな雰囲気のなかでビールを飲めば、ちょっと謎めいていたこの国にも、急に親しみが湧いてくる。ヤンゴンでは、ダウンタウンに繰り出してローカル気分を味わうのが、一番の楽しみかもしれない。

芹澤和美 (せりざわ かずみ)
アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.serizawa.cn

2016.03.25(金)
文・撮影=芹澤和美