世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第122回は、芹澤和美さんが、大人になった今だからこそ楽しい、冬の日光の過ごし方をレポートします!

イベント目白押しの二社一寺を拝観

美しい日光の冬景色。気温は低くても、自然や文化が心を温めてくれる。

 「年明け、日光に行こう!」と誘われたのは年末のこと。1月の日光といえば、気温も低いし雪も降る。寒さが苦手で、もっぱら亜熱帯気候のデスティネーションばかりを選ぶ私には、まったく眼中になかったエリアだ。それに、東照宮にも一度行っているし、ふたたび旅するのはずっと先だろうとさえ思っていた。まさか、真冬の日光旅をこんなに満喫することになるとは――。

 日光といえば、世界遺産の日光社寺。東照宮、二荒山神社、輪王寺という二社一寺からなる、美しい歴史遺産だ。まずは、日光の表玄関ともいえる、二荒山神社の神橋へ。かつては将軍様しか渡ることができなかった特別な橋だが、現在は、通行料を払って入ることができる。「願い事を書いた紙飛行機を、ご神体の男体山が見える上流に向かって投げる」というユニークな願掛けで、この旅をスタート。

左:翼に願い事を書いた紙飛行機を川に飛ばす。
右:願いを書く紙飛行機は、川を汚さないよう、水溶性の和紙を使用している。

 なかでも、ぜひ体験してみたかったのが、日光東照宮「将軍着座の間」の特別祈祷だ。拝殿内にあるこの部屋は、歴代の徳川将軍が参拝の際に座った部屋で、ふだんは観ることができない。そんな特別な場所に入れるとあって、巫女さんや神主様による境内案内が付いた特別祈祷ツアーは大人気なのだそう。

 2015年に400年式年大祭、2016年の今年は徳川家康御鎮座400年という節目を迎えた日光東照宮は、さまざまな祭典や特別公開で盛り上がっている。そんな折、こんな面白い話を聞いた。「日本の神様は西洋の神様と違って人間臭いところがある。私たちが信仰して盛り上げると、ご機嫌がよくなる」。つまり、お祭りムードに沸く今は神様もご機嫌で、ご利益も大いに期待できるということ!

左:巫女さんの案内で境内を見学。ハイライトは「将軍着座の間」での特別祈祷。
右:東照宮の境内にある五重塔。その優れた免震機能は、東京スカイツリーの制振システムにも応用されている。

 続いて、日光山輪王寺へ。広い境内の中には、本堂や大猷院(徳川三代将軍、家光公の墓所)、お堂や本坊などがある。日光山開山1250年記念にあたる今年は、大猷院と、国の重要文化財に指定された仏像がある常行堂を特別公開。なんと、創建以来、非公開とされてきた秘蔵の家康公のご位牌も初公開されている(2016年11月30日まで)。

左:「大猷院を建てたのは、徳川家光。金と黒を使用し重厚で落ち着いた造りであるのは、祖父である家康公を凌いではならないという、家光公の遺言によるものなんですよ」。お坊様の説明に、だんだん歴史の中に引きずり込まれる。
右:霊廟を守る四体の夜叉のひとつ、「烏摩勒伽(うまろきゃ)」。象がついた膝に注目。「膝小僧」の語源のひとつなのだとか。

 ひとしきり日光山内を歩いて、宿へ。歩き疲れた身体を癒してくれたのは、ホテル「日光 千姫物語」のおいしい料理。夕飯は湯波の刺身にとちぎ和牛、朝食は日光の名水で作られた豆乳と国産大豆のフレッシュな豆腐、日本唯一の天然菌わら納豆など、ヘルシーで美容にいい特産品をたっぷりと堪能した。

左:夕食のメインディッシュのひとつ、とちぎ和牛しゃぶしゃぶ。鰹と昆布をじっくり煮出した出汁が絶品!
右:目の前で作る豆乳豆腐は、ほんのりと自然の甘みが。

日光 千姫物語
所在地 栃木県日光市安川町6-48
電話番号 0288-54-1010
URL http://www.senhime.co.jp/

2016.01.26(火)
文・撮影=芹澤和美