イスタンブールに今、モダンアートの“バブル時代”到来!

イスタンブール・モダンは、金角湾とボスポラス海峡の双方を望む海沿いの元倉庫。クルーズ船の寄港ポイントに近いため、その乗船客も多く訪れる。

 イスタンブール観光といえば、ユネスコ世界遺産にも登録されている旧市街歴史地区のアヤソフィア、トプカプ宮殿、ブルーモスクなどを訪れるのが王道。確かに、ローマやオスマンといった大帝国時代を経験したこのエリアで古の時間を感じていると、それだけで満足してしまいそうになる。

トルコ現代アート界でもひときわ存在感を放つ、メフメット・ギュレルユズの作品展も開催された。

 でも実は最近、モダンアートシーンもかなり元気。トルコ経済の安定と発展に伴い、それまで地道にコツコツ作品を作り上げてきたトルコ人新鋭アーティストたちの作品が弾けたように世界で注目され始め、いわば“モダンアートバブル”的な時期を迎えている。サザビーズのオークションではトルコ・アートの売値が一気に上騰し、ニューヨークのPaul KasminやKrampfをはじめ、世界の一流ギャラリーが続々とイスタンブール支店を開設しているのだとか。

 さらに2013年に起きた若者たちによるゲジ公園デモでは、感受性豊かな新世代たちがこのムーブメントをアートで表現しようとする試みも多く行われ、モダンアートの盛り上がりに拍車をかけた格好となった。

Olafur Eliasson “Red Emotional Globe”(2010)/Courtesy of İstanbul Modern

 そんなトルコの現代アートシーンのけん引役となっているのが、新市街カラキョイ地区の海沿いに立つ「イスタンブール・モダン」だ。2004年にオープンした国内初・唯一の現代美術館で、トルコで制作された作品を中心におよそ160点のコレクションを持つ。開催される展覧会の分野は絵画に限らず、視覚芸術、写真、デザイン、建築、映画、文学、ニューメディア、パフォーマンス、アニメーションなど多岐に渡っている。

子ども向け企画も充実しており、学校向け見学から週末親子で参加できる教育プログラムまでいろいろ揃っている。

 トルコ全国、あらゆる層の人々にモダンアートを身近に感じてもらうこと、そして同時に国際的分野においてもトルコ芸術、文化のアイデンティティを広く認知してもらうことが彼らのミッション。このため、世界中の有名美術館とも連携を組み、各種イベントも精力的に行い、子ども向け教育プログラムも充実させ、さらにイスタンブール・ビエンナーレにも参加するなど、いつも企画は盛りだくさん。これまで、現代アートについては取り残された感のあったトルコ社会にさまざまな形でアプローチを試みている。

文・撮影=安尾亜紀