カッパドキアに誕生したプチラグジュアリーな洞窟ホテル

カッパドキアの岩石遺跡群は、ユネスコ世界遺産にも登録されている。気球が舞う朝の景色は美しい。

 エルジエス山の噴火からできた奇岩で有名なカッパドキア。その歴史は古く、初めてキリスト教徒がこの地に来たのは、およそ2000年前。彼らはローマによる迫害から身を守るため、地下に都市をつくって隠れ住んでいたのだという。カッパドキアには、今でもこうした地下都市や、人が掘った洞窟家屋が無数に残っている。

日本語ペラペラのオーナー、アルペルさん40歳。

 2015年3月、ウチヒサールの高台にオープンした「ミルストーン・ケイブ・スイーツ」も、2世紀ごろから残る洞窟を活用したデザインホテルだ。オーナーは、20年近く日本語ガイドをしていたというアルペル・カンクルチュ氏。先祖代々の土地を受け継いできた地元住人27人からこの土地を買い集め、地下に広がる洞窟式の部屋をうまく保存しながら3年かけて建設した。「とにかく、元の形を壊さないよう気を使いました。13部屋のうち9部屋と、そしてレストランは元の洞窟をそのまま利用しています」。

土地を購入した当時の写真(左)と、現在(右)外観。

 確かに、どの部屋も洞窟の昔の姿をうまく残してある。壁にはいくつもくぼみがあり、そこに間接照明やろうそくが置かれているので、当時の人の生活を体感できるかのようだ。また、昔から残るドーム天井の小部屋をハマムに改装した部屋もある。自分の部屋でハマムが体感できるなんて、なんてラグジュアリーなんだろう。

その昔、鳩を育てるために作られたと考えられている部屋(1013号室)は、ハマムになっている。

 洞窟ではない部屋も4部屋ある。古い石材が使われているので味わいがあり、ところどころ見えるトルコブルーが美しい。建設中、近所で古いアルメニア邸宅の取り壊しがある、と聞きつけると飛んでいって、その家の壁に使われていた石を買い集めたのだという。石の一部がブルーなのは、そんなアルメニア建築の名残だ。

部屋の内部もバス・シャワーのスペースも大きくとられているので、かなり開放感がある。

 家具の多くは、インドネシアまで行って買い付けたり、特別に注文したりしたデザイン。アルペル氏曰く「なぜだか分からないけれど、こういう洞窟ホテルにしっくりくる家具を探し求めていたら、バリ島にたどり着いたんです」…… 確かに、チークなど風格ある質感の木材で作られた家具はカッパドキアの雰囲気にしっくりなじんでいて、落ち着きのあるデザイン感がホッとさせる。さらに全部屋にアクリル製ソリッドサーフェスのバスタブがおいてあり、こちらはドイツからの特注品だ。シャワールームも別途完備されているので、きれいにしてからお湯につかりたい日本人にはぴったり。

文・撮影=安尾亜紀