三浦しをんの人気シリーズ3度目の映像化

松田龍平演じる行天(左)の小指には、二人の中学時代の思い出(因縁)が。原作では高校時代だが、映画では中学時代という設定になっている。

 ゆるくて危険な、バツイチ便利屋コンビが帰ってくる。

 映画『まほろ駅前狂騒曲』は、三浦しをんの直木賞小説を、瑛太と松田龍平主演で映画化した『まほろ駅前多田便利軒』(2011)、その番外編である連続ドラマ「まほろ駅前番外地」(2013)に続く、人気シリーズの第3弾。

 責任感が強く他人の人生に関わりすぎてしまう、便利屋の多田啓介(瑛太)。マイペースでつかみどころのない風来坊だが腕っ節だけは強い、行天春彦(松田龍平)。中学時代の同級生で、とある因縁のある二人が久々に再会したことから始まった1作目、町の住人たちのさまざまな依頼を不器用に解決してきた2作目に続いて、今回は行天の知られざる過去が明かされると共に、まほろ史上最大の事件が勃発する。

多田と行天は、行天の娘はるを連れてリス園へ。行天と元妻は、いわば契約結婚だった。

 二人が住むのは東京都下にあるという、まほろ市。町田市のような、そうでないような、まぼろしのような町は、「ゆりかごから墓場まで」をスローガンにしたなかなか暮らしやすそうな町だが、住人はみんな訳ありで、便利屋に厄介な依頼を持ち込んでくる。まあ、訳のない人間などいやしないが、多田自身もかつて幼い息子を自分の不注意で失くしており、ことさら子供がらみの案件に弱い。

 第1作の『まほろ駅前多田便利軒』では、ドラッグの運び屋をしていた小学生の由良を助けたが、今回は行天の元妻(本上まなみ)から頼まれ、5歳の娘はるを預かることに。はるは、元妻が行天から精子提供を受けて授かった娘。両親に虐待されて育った行天は子供嫌いであり、娘と一度も顔を合わせたことがなかった。

2014.10.16(木)
文=石津文子