より使いやすい形に作品を「改変」

 そればかりでなく、より使いやすい形に作品を改編するのを辞さなかったことも、将軍家のコレクションの特徴だろう。コレクションのリストとして知られる『御物御画目録』に記された290点の絵画の中に、たった1人で109点を占めた南宋の画僧・牧谿の最高傑作、《瀟湘八景図》がある。湖南省にある洞庭湖の南、瀟水と湘江という二つの川が合流するあたりの、中国では昔から知られた水辺の名所をモチーフとしたもので、当初は4場面ずつを描いた巻物が2巻セットで「八景」だったはずが、誰かの意図によって、8点の掛物に分断されてしまった(今展にそのうち2点が出品される)。

国宝「漁村夕照図」 牧谿筆 南宋時代 根津美術館 展示期間:11/18~11/24
重要文化財「遠浦帰帆図」 牧谿筆 南宋時代 京都国立博物館 展示期間:11/4~11/16

2014.09.27(土)
文=橋本麻里