#5 タロイモ畑

カロ、つまりタロイモは親芋に子芋ができ、子芋が成長して増える。葉も茎も食べることができる。

 私たちがお米で、ハワイの人々はタロイモだというと、話が早いだろうか。

 タロイモはハワイ語でカロ。カロの歴史はハーロアという神の子の誕生から始まる。

 創世の時代に、天空の父なる神ワーケアと母なる大地の神パパ、娘のホオホークーラニがいた。ハーロアは、ワーケアとホオホークーラニの間に生まれる。しかし、未熟のまま生まれたために生きることができず、ワーケアとホオホークーラニは夜明けにハーロアを家の東に埋めた。すると埋めた場所からまず長い茎がのび、大きなハートの形の葉が広がり、風が吹くたびにこの葉が震えた。ワーケアとホオホークーラニはこの植物をハーロアナカラウカパリリと名付けた。これがカロの誕生である。

 ホオホークーラニはしばらくしてまた身ごもり、この子どもは無事に生まれる。この子どもは初めに生まれたハーロアに敬意を表して、ハーロアと名付けられ、このハーロアこそが初めの人間となる。カロは大地のなかで大きく育ち、収穫の際には親芋を食べ、子芋は大地に植えられ、また成長していく。食べた人間は生を得て、子孫繁栄を続けるため、ハワイの人々はカロを自分たちの祖先として大切にしているのだ。

 見学用の施設を除き、マウイ島でカロ畑を身近に見ることができるのは島の北部のケアナエ半島かもしれない。また、カハクロア村のように昔からのアフプアア――山から海へといたる三角形の範囲を、自然との結びつきを大事にしながら各共同体が治める体系――を守って暮らすなかで、それぞれの家族がカロ畑を持つところもある。

 ポイと呼ばれる、カロを蒸してつぶし水を混ぜたものは店でも購入できるし、レストラン、ルアウ・ショーなどに行けば食べることもできるが、収穫したカロを蒸してつぶしただけのパイアイを一度食べると、その美味しさと力強さに虜になる。


【Access & Advice】
ケアナエ半島はパイアからハナに向かう道の中間地点。ハナ・ハイウェイから眺めることもできるこの半島には、美しいカロ畑が広がる。ここに降りていくと焼きたてのバナナブレッドと飲み物を売る小さな店があるので、是非立ち寄ってみよう。カハクロア村は、マウイ島の西半分をぐるりとドライブする際に通りかかる。舗装もかなりされているが、崖沿いの道は道幅が狭いので運転には注意しよう。

神宮寺愛(じんぐうじ あい)
ライター・コーディネーター・翻訳(英語・ハワイ語)・フラダンサー。出版社勤務後、フリーランスになり、日本文化とハワイ文化に親しむべく、学びの日々を続けてマウイ島在住14年目。13歳の娘とイタリア系アメリカ人のパートナーとの三人暮らし。雑誌への寄稿多数、著書『心と体がピュアになるハワイアンな暮らし』(青春出版社)など。

2014.08.22(金)
文・撮影=神宮寺愛