4枚衣、花柄、フリル付き
移り変わるデザイン

左:17世紀のアオザイを再現。当時は茶系の色合いが一般的だったとか。
右:グエン・カット・トゥオンが提唱した西洋風アオザイ。フリルが斬新。

 現在のアオザイは体にフィットし、深いスリットの入った上着にパンツを合わせるスタイルが主流。しかし、その形は時代によって異なります。とくに上衣に大きな特徴があり、たとえば17世紀ごろのアオザイは、上衣に前後2枚ずつ、計4枚の布を使い「アオトゥータン」とも呼ばれていました。比較的ゆったりとしたシルエットで、当時はスカートを合わせることが多かったとか。

 ところが18世紀に入ると、内側が見えないよう、スリット部分に布をもう1枚加えた5枚仕立てが誕生。スカートからパンツスタイルに変わっていったのも、この時代だといいます。

 20世紀のフランス領時代になると、気鋭の画家グエン・カット・トゥオンが西洋風のアオザイを発表。フリルがついたりドレスのようだったりと、あまりの奇抜さで一般的にはならなかったようですが、これまでの伝統的なスタイルに一石を投じ、自由なデザインが一気に花開いたのです。

左:ビビッドな色合いと柄のヒッピースタイル。
右:豪華な装飾をほどこしたアオザイもある。

 そして20世紀半ば、アメリカの影響を色濃く受けるようになると、ヒッピーを意識した花柄や鮮やかな色彩のアオザイが若者を中心に流行するようになりました。その後、紡績や縫製技術のさらなる向上により、ポリエステル素材のものや緻密なプリント柄の生産が可能に。そして現代のさまざまなスタイルのアオザイが生み出されるようになったといいます。

日本やアメリカなど、各国の衣装をとりいれた実験的なアオザイサンプルも。

 単に衣装というだけでなく、ベトナムの歴史や文化、道徳なども反映しているとされるアオザイ。博物館はホーチミン市中心街から車で約40分と少し遠方にありますが、ほかではなかなか見ることのできないアイテムが多数展示されているので、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

南部の伝統歌劇カイルオンで使用されるアオザイ。

Bao Tang Ao Dai (アオザイ博物館)
所在地 206/19/30 Long Thuan St., Dist.9, HCMC
電話番号 +84-91-491-2982
開館時間 8:30~17:30
入館料 10万ベトナムドン
URL http://www.baotangaodaivietnam.com/

杉田憲昭(すぎたのりあき)
ベトナム・ホーチミン市在住のフリーランスエディター・ライター&フォトグラファー。日本で編集者として活躍後、渡越。在ベトナム20年。女性誌や旅行誌、機内誌などの取材・撮影・コーディネートを通じ、幅広くベトナム情報を発信中。

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文・撮影=杉田憲昭