中野京子が伝授!
名画を10倍楽しむ鑑賞法

 中野さんの絵画エッセイを読むと、難解な名画が、身近で面白いものに見えてくる。美術展でもそんな風に楽しみたい、という人に贈る、今年おすすめの3つの展覧会ガイド。

» 印象派の傑作が揃う「オルセー美術館展」
» ボッティチェリの世界に耽溺「ウフィツィ美術館展」

こども展
名画にみるこどもと画家の絆

(東京展/森アーツセンターギャラリー) 
(大阪展/大阪市立美術館)

行けばもれなく“元気”がもらえる!

 本展は、2009~10年にオランジュリー美術館で開催された『Les enfants modèles』(「モデルとなった子どもたち」と「模範的な子どもたち」のダブルミーニング)を、日本向けに時代、流派に分けて再構成したもの。各時代によって子どもたちの服や髪型、遊び方の変化も楽しめる。

 画家に焦点を当てた名画鑑賞とは違い、描かれる側、つまり子どもたちの目線を通じて、その作品を読み解いていくというのが本展のテーマ。これまでにないユニークな鑑賞法を提案しているのが意義深い。

 「子どもの絵は観ていてエネルギーをもらえるんです。それは子どもが未来に向かう存在だから。いい絵も来ているし、予想以上に“気持ちのいい”展覧会でしたね」と、中野さんも大絶賛である。

門外不出だった名作が「こども展」のために初来日!

『教室にて、子どもたちの学習』アンリ・ジュール・ジャン・ジョフロワ:1889年 油彩・カンヴァス 145×220cm パリ、フランス国民教育省蔵 (C) RMN-Grand Palais / Jean-Gilles Berizzi / distributed by AMF – DNPartcom

「家で手縫いしてもらったのか、少しずつ違うスモックを着た生徒たちと、女性教師。これはフランスが世界で初めて初等教育の義務化・無償化を実現したことを『すごいでしょ!』と自慢するために描かれた絵(同じころ日本では寺子屋以来の伝統で識字率は世界一でしたが)。ふだんはフランス国民教育省に飾られているので、こんな機会でないとお目にかかれない、必見の名画です」

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2014.06.18(水)
文=宮下哲

CREA 2014年7月号
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この記事の掲載号

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