季節がひと足早い南イタリアの春景色

2月末のシチリア内陸部の風景。

 島とはいえ、四国よりひと回り大きいシチリア。青い地中海を望む海沿いの街々から、一歩内陸部に入れば、延々と小高い山々が連なる壮大な風景が広がります。映画『ゴッドファーザー』や『ニュー・シネマパラダイス』から、荒涼とした大地をイメージしがちですが、太陽に焼かれた大地とゴツゴツした岩山がつくりだす、あのベージュ系の色合いは、シチリアの典型的な夏の風景。そんな季節にむかっていく春はといえば……。

桜の花によく似たアーモンドの花も満開。アグリジェントでは、2月中に「アーモンドの花祭」も開催される。

 南国シチリアの春の訪れはひと足早く、北イタリアが雪に覆われている1月ごろから新緑が芽吹き始め、2月後半にはあたり一面が新緑色となります。シチリア人にとってみれば、新緑は冬の色なのだとか。かつて「古代ローマの穀倉」と呼ばれた、豊かな実りをもたらす大地は今もかわらず、3月にもなれば新芽を吹いた小麦が埋め尽くす緑の大海原。色とりどりの花も咲き乱れた大地は、まるで楽園の様相です。

左:3月8日の「女性の日」に送られるミモザも、2月から咲き始める。
右:前夜に生まれたばかりの子羊。出産の季節でもある。パスクア(イースター)でバーベキューに……。

 また、新緑の季節は羊の季節。柔らかな新芽を思う存分に食べた羊の乳で作るチーズ、特にリコッタチーズが美味しくなるといわれています。いわば、リコッタチーズの旬。

 スーパーマーケットで売られているパッケージされたリコッタだと、旬の美味しさがわかりにくいかもしれませんが、できたてならその風味の違いは歴然。カゼイフィーチョ(酪農家の乳製品工房)の春のリコッタ・ディ・ペコラ(羊のリコッタ)は、わざわざ車を飛ばして買いに行きたくなるほどです!

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文・撮影=岩田デノーラ砂和子