この記事の連載

 2016年からライブ配信サービスTwitCastingで放送している怪談チャンネル「禍話」。語り手であり北九州で書店員として働くかぁなっき氏と、聞き手であり彼の大学時代の後輩である映画ライターの加藤よしき氏の名コンビが、軽快なトークともに繰り出す怪談の数々は、その語り口とは裏腹に一度聞いたら忘れられない恐ろしいものばかり。

 今回は、そんな「禍話」から“不可思議な隣人”にまつわる悪夢めいた恐ろしいストーリーをご紹介します――。(前後編の後編)


自分にしか見えていない女の子の姿

 回覧板を渡しに行ったり、買い物帰りに一緒になって身重の彼女のために荷物を運ぶのを手伝ったりと、AさんがMさんの家を訪ねるタイミングは何度もありました。

 パタパタパタパタ……。

 Aさんはその度にMさんの家の廊下を駆けていく“小さな女の子”を目撃したそうです。

「あの子は誰?」

 何度もそう聞こうとしました。しかし、一切女の子の姿が見えていないし、駆け回る音も聞こえていないと言わんばかりのMさんの素振りを見ていると、Aさんはなんだか怖くなって質問できなかったといいます。

 そんな奇怪な日々を送るうちに、Aさんは自分の見えているものがこの世に存在していないのではと思い始めたそうです。

 その日の夜。Aさんは旦那さんにこれまで自分が見てきたことを話しました。

「本気で言っている……?」

「ねえ、ここ事故物件とかじゃないわよね?」

「借りるときに聞いたけど何にもなかったよ……」

 あのプラスチック製の椅子、それにあのまるで生きているような子どもの顔。

 それまで霊感など一切なかったAさんは、ひどく混乱したそうです。

2024.04.24(水)
文=むくろ幽介