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いいムードを循環させていけば、世界は幸せになれる

――では、やはり60歳以降の小泉さんの動向も着目しないと……。

 消息を絶っちゃうかもしれないし、分からないですよ(笑)。みんなが「そう来たか!」と思うようなことをやっちゃうかも、ですし。

――書籍の中で「諸先輩方と“死”について話すことがある」とおっしゃっていましたが、60歳を目の前にして、ご自身の中で“人生のゴール”のようなものをお持ちですか?

 特にないんです。でも本当にこんなに長く生きるとは思っていなかったんですよね。

 私は小さい頃から【死】というものにすごく興味がありました。“死にたい”というわけではなく、どっちかというと“憧れ”に近い感覚だったと思います。物語の中に出てくる“死”も、映画の中に出てくる“死”も、あと、身近な人の“死”も、すべて美しいモノとして見えていたんです。【死】自体が恐ろしいものではないという感覚が、ずっと自分の中にあって。

 だから、“生きている”ことを考えるよりも、“死ぬ”ことを考える時間のほうが長かったです。そうこうしていたら意外と生きたなという年齢まで来ちゃって(笑)。でも今度は、ここまで来ちゃうと本当に【死】が遠くないところにあって、急に具体化してきた感じ。

 だから、リアルな話になっちゃいますが、私は独り者だし、こんな仕事をしていると権利関係がかなり面倒なんです(笑)。姉の子どもたちは分からないだろうし、迷惑かけたくないのでそういう準備を始めないといけないなぁとか、そういうことは考えています。

――なるほど。最近、小泉さんは『文藝春秋』2月号の有働由美子フリーアナウンサーとの対談でバラエティ番組に対して「出たくない」「くだらないから」と話されたことがネットニュースなどで取り上げられましたが、実際に舞台などの制作にも関わっていらっしゃるので、どういった意図があったのかをお聞かせいただけますか?

 原稿チェックもさせていただいたので、訂正することもできましたが、そうしなかったのは私です。それに色々な人が乗っかってしまい、大事になった感覚は一瞬ありましたが、でも別に何とも思ってないです。だって、本当にそう思うんだもんって感じなんですよ(笑)。

 あの発言は特に現場でモノを作っている方や出演されている方に対してというわけではなく、構造自体がおかしくなってるよ、という話をしたかったんです。どの業界もそうですが、アップデートをしていかないことに問題がありそうだなと思っていて。

 私の場合は、何が作りたいか、とてもシンプルです。人が元気になったり、楽しいと感じたり、希望を持てるようなものが作りたい。何だか子どもみたいな答えですけど(笑)、それを忘れちゃってない? と、そんなふうに思っています。

――最後に30代のCREA世代の読者にメッセージをいただけますか?

 私が子どもを産んでいたら、CREA世代になっている可能性もあるかもしれないのかぁ。最近、ライブにも親子で来てくれる方、多いんですよ。お母さんと娘さんという組み合わせはあるだろうなと思っていましたが、息子とお母さんというパターンでもかなり来てくれているようなんです。

 若い子たちは私が出ている出てないは関係なく、私がプロデュースしていることに興味を持ってきてくれているようなので、それもすごく嬉しくて。

 そうだな。みんなのお母さんとお父さんを元気にすることは私の役目。その“元気になったお父さんとお母さん”から、いいムードを受け取ってください。ライブは本当にそういう気持ちでやっているので、そのムードを受け取ってくれたら、友達やみんなに分けてほしい。そうやっていけば、世界は幸せになりませんかね? みんなで支え合い、循環し合って生きていきたいですね!

小泉今日子

神奈川県生まれ。1982年『私の16才』で芸能界デビュー。以降、歌手・俳優として、舞台や映画、テレビなど幅広く活躍。2015年より代表を務める『株式会社 明後日』では、プロデューサーとして舞台や音楽イベントなどの制作も手掛ける。文筆家としても定評があり、著者に『黄色いマンション 黒い猫』(スイッチ・パブリッシング/第33回講談社エッセイ賞)、『小泉今日子書評集』(中央公論新社)など多数。2021年4月より約2年半の間、Spotifyオリジナル・ポッドキャスト番組『ホントのコイズミさん』にてパーソナリティを務める。

Spotifyオリジナルポッドキャスト「ホントのコイズミさん」

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次の話を読む小泉今日子がホントのコイズミさんで感じた宮藤官九郎たちの“ムード”ーー2024年前半BEST7

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2024.03.13(水)
文=前田美保
撮影=深野未季
スタイリスト=藤谷のりこ
ヘアメイク=石田あゆみ