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【小泉今日子】はみんなで創り上げたキャラクター

――小泉さんは【花の82年組】としてアイドルデビューされて、今日までずっと活躍されていますが、当時イメージしていた未来の延長線上に“現在の小泉さん”の姿を描けていましたか?

 ここまで生きているってことも想像していませんでした(笑)。もっと刹那的なYOUTHの時代だった気がします。

 忙しかったから、というよりは、歌手になる前から、自分があまり遠い未来まで生きているということを想像できていなかったんです。その日その日を生きている、という感覚が強くて「明日死んでもいいや」といつも思っていました。

 それが、40歳くらいになったときから「あれ、これからも生きるのかも」って(笑)。どうせ生きるんだったら、ここからの人生、生きているうちにできることを目標にしてやってみようかなという感覚が生まれたんです。

 それで、2015年に株式会社 明後日(あさって)を立ち上げました。人並みに「定年と言われる年齢までもう少ししかない!」といった感覚になりまして(笑)。

――表舞台での活動も続けながら、プロデューサー業など、裏方のお仕事もされています。書籍の中でも「自分が先輩方にしてもらったことを、今度は自分が次の世代に」という“恩送り”についてもコメントされています。

 ひとりではなかなかできませんが、仲間がいれば可能なんですよね。自分に足りないものを持っている人が周りにいれば、みんなでチカラを合わせて、動けるという感じかな。

 仲間というのは今までの人生で一緒に仕事をしてきた方々でもありますし、自分の会社の社員もそうです。また、この番組や書籍を作っていく過程で仲間が増えたという感覚もあります。

 どの仕事でもそうなんですが、私は常に“みんなで作っている”という意識が昔からあるんです。【小泉今日子】というキャラクターも歌手も、みんなで作ったモノなんですよね。だから私も、状況を常に客観視していました。

 表に出る顔としては私ひとりですが、ディレクターがいて、ミュージシャンがいて、コンサートを演出する人がいて、照明さんがいて……。その感覚でここまでずっと生きているんです。

――アイドルとしてはすごく珍しい立ち位置だったと思います。男性だけでなく、女性ファンが多かったのも、そういう小泉さんのスタンスが伝わっていたからでしょうか?

 いい大人がそばにいてくれたんだと思います。よその人には「変人!」って言われていましたから(笑)。言うことを聞かないし、お金にもなびかない。コントロールしづらい……。でも、私は仕事で付き合っているんだから、仕事で結果を出せばいいじゃんって思っていたんです。

 だから、たとえ「変人!」と言われていたとしても、私の周りには“そう扱わせない”、素敵な大人が何人もいてくれたんです。あとは家族の存在も大きかったですね。ずっと普通に接してくれている、そんな感じでしたから。

小泉今日子

神奈川県生まれ。1982年『私の16才』で芸能界デビュー。以降、歌手・俳優として、舞台や映画、テレビなど幅広く活躍。2015年より代表を務める『株式会社 明後日』では、プロデューサーとして舞台や音楽イベントなどの制作も手掛ける。文筆家としても定評があり、著者に『黄色いマンション 黒い猫』(スイッチ・パブリッシング/第33回講談社エッセイ賞)、『小泉今日子書評集』(中央公論新社)など多数。2021年4月より約2年半の間、Spotifyオリジナル・ポッドキャスト番組『ホントのコイズミさん』にてパーソナリティを務める。

Spotifyオリジナルポッドキャスト「ホントのコイズミさん」

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次の話を読む「メルカリで売るんじゃないでしょうね?ってくぎを刺したり(笑)」58歳の小泉今日子が話す還暦後の“楽しみ”

2024.03.13(水)
文=前田美保
撮影=深野未季
スタイリスト=藤谷のりこ
ヘアメイク=石田あゆみ