本物の野菜の味わいが与えるシンプルな感動

縦に切って供したオマールの身。火を通しながらも、生のフレッシュ感を失わないクオリティに脱帽

セバスチャン 彼は、アーティストだ。そして、世界中にもポジティブな影響を与えて来た人だと思うよ。洗練を目指しているという時代にあって、アランは、トマトで僕たちを幸せにしてくれるんだから。

アヤ 本物の野菜の味わい、新鮮な本物の素材が与えてくれるシンプルな感動を再発見させてくれるのよね。

セバスチャン 昔は庭で育てていたような本物の味わいを、僕たちはすっかり忘れてしまっている。今やミシュランの星付きレストランに行かないと、そんな味わいに出会えないなんて、悲壮的だな。もう、その辺りの店では、僕たちは素晴らしい素材を買えなくなってしまっている。田舎の農家が集まるマーケットに行かないと、五感が目覚めるような素材に出会えない。そんな中、アランは、シンプルなトマトを素晴らしい前菜として出してくれる。それが素晴らしいと思う。

アヤ アランの店に行くと、キッチンに呼んでくれて、仕事を見せてくれることもあるのだけれど、それは素晴らしいひとときよ。例えば、グリーンサラダ1つ作るにしても、アランがこう、1種類1種類を触って、味わって、香りをかいで、それで、いろいろな味わいの野菜の配分を決めて、合わせていく。そして、その味わいに対して、ちょうど良い味付けをする。そんな彼の動きといったら、美しくて、ピュアで、自然で、そしてでき上がった味わいは、まるで音楽のメロディーのよう。それぞれに調べがあって、ストーリーが生まれるの。

セバスチャン そうさ、アランはマイスターなんだ。アランの父親はミュージシャンだったから、その感性も継いでいるはずだ。音符という素材からどんな味わいも引き出してメロディーを作る、本物の詩人だ。

<次のページ> アランの菜園では馬が畑を耕している!

2014.02.10(月)