軽さや柔らかさを理由に履きやすさを訴求するスニーカー・革靴は数多くありますが、靴の販売業に20年超従事し、現在、靴のお悩みアドバイザーとして活動している筆者は、そうした製品をおすすめしていません。

 なぜ私は軽いスニーカーや柔らかい革靴をおすすめしないのか。それぞれの理由について紹介していきます。

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軽いスニーカーの“落とし穴”

 はじめに断っておきたいのは、「軽量を謳っているスニーカー=悪い」というわけではないということです。メーカーが、明確なコンセプトのもと靴を作り、その結果として軽量化を実現しているとしたら、それは素晴らしいことでしょう。

 しかし、実態として「軽量」を謳い文句とする靴の多くは「靴を構成するパーツの一部を省いたり、安価な素材を使用することで、品質を落とし、結果的に軽量になっている」靴がほとんどなのです。

 省かれやすいパーツの代表格が「靴底のゴム」。

 接地する部分に貼ってあるゴム素材は「靴底の耐久性が上がる」「滑り止めになる」といった明確なメリットがあるのですが、製造上の工数やコストを省くために、ゴムを使用していないスニーカーは少なくありません。そして、それらは往々にして「軽量」であることを謳い文句に売り出されているのです。

 そうした「軽量スニーカー」の靴底は、主に「EVA」という素材で構成されています。

 スニーカーには程よいクッションが必要なので、EVAを用いること自体は問題ありません。しかし、底がEVA“だけ”の靴は、寿命がとても短くなってしまいます。歩行によってクッションはどんどんへたりますし、地面との摩耗に弱い素材なので底の減りも早いのです。

 

 実際に、PUMA「ALL-DAY ACTIVE」と「STYLE RIDER PLAY ON」という、使用用途が似たスニーカーを比較してみると、ALL-DAY ACTIVEでは靴底のほとんどがEVAで仕上げられている一方、上位モデルのSTYLE RIDER PLAY ONでは靴底の全体にゴムが貼られていることがわかります。

2023.10.18(水)
文=遠山めぐ美