マドンナは少女のころから変わっていない。世界に対して、挑発的なかたちで疑問をなげかける反逆者でありつづけている。

マドンナが語った「キャリアが途切れない秘訣」

 もうひとつの不変の原点は、ダンサーとしてのプロ主義だろう。これはロングキャリアの理由にもなっている。

 マドンナ自身「ほとんどの仲間が死んでしまった」と嘆くように、アメリカでスーパースターの早逝は珍しくない。一方、高校の恩師に規律を叩き込まれた彼女の場合、なにごともコントロールしたがる気質で、酒や薬をあまりやらない。本人の言葉を借りれば、依存症とあまり縁がないタイプだったのだ。

 子どもができてからは育児の忙しさに追われたため、自分自身について思い悩む時間がなくなったことも精神的健康に寄与したという。

 つねにパワフルな姿を見せるスタンスも、ダンサーとしての哲学が関係している。

「私の仕事は、イリュージョンを創造し、人々に夢やインスピレーション、感動を与えること。だから、その裏にある労力は見せたくないの。ダンサーとして、いくら苦しくてもリラックスした表情でいろと鍛えられたしね」

 人々を刺激すると同時に、夢や勇気を与えてきたマドンナ。今はゆっくり休んで、英気を養ってほしい。

2023.08.12(土)
文=辰巳JUNK