この記事の連載

 買い物、献立づくり、調理、そして片付け。一口に「料理」といっても、さまざまな要素があり、特に育児中は苦痛に感じる人も多いのでは? それは料理のプロである、料理家だって同じ。彼らの食卓をのぞけば、ひらめきや勇気をもらえるかもしれない。

「味付けにもう悩みたくない。調味料はひとつでいい」と語るのは人気料理家の近藤幸子さん。その生活から、がんばらない食卓へのヒントを探しました。


理想にとらわれすぎず前向きな手抜きをしよう

 16歳と10歳の姉妹の母である近藤さん。2人の娘がまだ小さかったころは「料理家なんだから、子どもたちには毎日手作りの料理を食べさせるのは当たり前。他人が憧れるような丁寧な暮らしをしなくては」という呪縛にとらわれていたそう。

「実際は仕事や家事でそんな余裕がなかったうえに、2人とも偏食。せっかく作っても食べてくれないことが多く、『私が作る料理がいけないのか』と、料理への自信までなくなり、どんどん追い詰められていきました。夫は仕事で忙しく、実家も遠いので孤独を深めていった時期も」

 悩んだ末に近藤さんがたどり着いたのが、がんばりすぎない「前向きな手抜き」というスタンス。

「今日使う食材を決めるだけでも大変なのに、味付けまで考えて、さらには調味料をいくつも計量するなんて面倒。もちろん洗いものだってしたくない。でも毎食レトルトや冷凍食品だと、料理家なのにこれで本当にいいのかな、と自己嫌悪になってしまう」

 そんな自分の気持ちに正直に従い、現実と折り合いをつけていって生まれたことのひとつが、調味料ひとつで味付けするという調理法。食材の味がいきるシンプルな味付けは子どもたちに好評で、近藤さんの心も軽やかにしてくれた。

●洗いものはとことん減らす

ハンバーグはフライパンの中でこねる

「ハンバーグは子どもウケはいいけれど、脂が付いたボウルなどを片付けるのが面倒で……。そこで思いついたのがフライパンでこねてそのまま焼いてしまう方法」

(1)合びき肉300グラム、玉ねぎ(みじん切り)1/2個、卵1個、パン粉20グラム、塩小さじ1/2、こしょう少々をフライパンの中でこねる。

(2)厚さが均一になるように広げて焼く。

【POINT】

洗いものが減らせるだけでなく、丸める手間も省けるので時短に。新鮮な見た目に子どもは大喜び。チーズをのせて焼いてもおいしい。

2023.09.11(月)
Text=CREA編集部
Photographs=Wataru Sato

CREA 2023年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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