働いているかぎり給料は上がり続け、60歳の定年を迎えればまとまった額の退職金が手に入る。だが今や現実は……。

 50代に入ると役職定年にかかるか否かの危険信号が灯り、あえなく役職定年となって平社員に戻れば、給料は減る。さらにその先では、60歳で定年を迎えても退職金の出ない企業が増加中。そして今、会社員ならば誰もが直面することになるのが、継続雇用を希望して65歳まで働くかどうかという決断だ。

 どう働き、どうマネープランを立てるのが正解なのだろうか?『週刊文春WOMAN2023夏号』より、一部を抜粋して紹介する。

 ある大手メーカーの男性社員(57歳)は55歳で役職定年を迎えた後、未経験のDX系の部署に回された。今の職場は、年下の社員たちの口から出る、聞いたことのない言葉が空中を飛び交っていて、つい心の中に浮かぶのは「付いていけない」「嫌だ」という後ろ向きの言葉ばかりだ。

 大学卒業後に大手メーカーに入社した男性(62歳)は、50代半ばで関連会社へ移り、定年後、継続雇用を希望した。だがコロナ禍でリモートワークが導入された時に与えられたのは、社員がリモートワークをきちんと行っているか“監視”する仕事。社員に恨まれる立場であり、やる気は喪失した。辞めてもいい人材とみなされたとしか思えず、退職を考える日々……。

 今、50代以降の会社員は「職場環境の悪化」、さらには「経済環境の悪化」に直面している。

 つい最近まで、「50代は可処分所得が一番高く、老後に向けて貯蓄もできる」と言われた。子供は成人し、住宅ローンを払い終え、給料は最も高くなる時期だったからだ。しかし近年は、晩婚化等で子供の成人は遅く、定年後まで住宅ローンが残りがちな上に、給料の上がり方を示す「賃金カーブ」も緩やかになった。

 

退職金は10年で1000万円減少

 大卒新入社員の月給を25万円とした時、50~54歳の男性の月給は、1995年時点では56万円まで上がっていたが、2021年には48万円までしか上がらなくなった(賃金構造基本統計調査より算出)。

2023.07.04(火)
文=坂田拓也