最近の地図アプリは、地図や実際の道路の画像だけではなく、航空写真を3D画像で立体的に表示してくれるため、スマホを眺めるだけで現地に行ったかのような気分を味わえる。

 ある日、私は“日本のエーゲ海”と称される岡山県瀬戸内市牛窓町から、岡山市東区にかけての瀬戸内海に面したエリアの地図を、ぼんやりとアプリで眺めていた。このあたりには昔から塩田や干拓地が多く、地図を見ているだけで面白いのだ。

 地域を流れる千町川の広い中州のような場所には畑や民家があり、「面白いなあ」と思って眺めていたが、さらに下流にスクロールしたところで私の手が止まった。河口の水門湾にほど近い位置に水門が2基あり、水門と水門の間、つまり川の中央に民家があるのだ。

 航空写真で見ると、川のド真ん中に数軒の民家が浮かんでいるように見える。あまりに衝撃的な航空写真に心を奪われた私は、早速現地に向かった。

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 岐阜の自宅を出発してから5時間。岡山ブルーラインの西大寺インターチェンジを下りて千町川沿いをしばらく南下すると、あの水門が見えてきた。

 ここまで向かう道中「地上から見ても分かりにくいのではないか」と危惧していたが、それは杞憂だった。地上から見ても、十分に衝撃的な光景だった。川の中央部に小さな島があり、数軒の民家が建っている。島の両サイドには大きな水門があり、水門の脇にそれぞれ橋が架かっているため、川の対岸へ通り抜けることができる。

 邪魔にならない場所に車を置き、歩いて通り抜けることにした。最初に、川の左岸(東側)から橋を渡って民家が建っている島に入る。こちらの水門は“千町川大水門”といい、銘板を見ると昭和47年に建設されたようだ。

 川の真ん中の小島に、確かに民家が建っている。車庫に自動車が停まっていたりと、生活感がある。ここが川の真ん中ということを除けば、いたって普通の集落だ。

 

 あっという間に島を横断し、右岸(西側)の橋を渡る。島の端から端まで70メートルほど、徒歩1分で横断してしまった。右岸の水門は“千町大水門”といい、昭和59年の銘板があった。反対の左岸にあった千町川大水門とは“川”の一字の有無によって区別されている。

2023.06.16(金)
文・写真=鹿取茂雄